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文献詳細

雑誌文献

精神医学15巻8号

1973年08月発行

文献概要

短報

L-DOPAとMethyl-phenidate併用ではじめて改善された周期性傾眠症の1例

著者: 佐藤英輔1 中根允文1 高橋良1

所属機関: 1長崎大学医学部精神神経科

ページ範囲:P.900 - P.903

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I.はじめに
 周期的に数日間持続する傾眠と脱力倦怠感を起こし間歇期に多くの回想不全を残す周期性傾眠症は,比較的青年男子に多く,予後は良好といわれる。高橋1)の多数例についての研究により,このなかには傾眠を中心として関連症状のみをもつ中核群と,意識障害や一過性の精神症状などの辺縁症状をもつ非定型群のあることが整理分類されている。今日までの研究により,この疾患の本態は睡眠過多であり,間脳を中心とする睡眠中枢の調節障害にあると推測されている。したがって治療については,中枢刺激剤が用いられるが,同じ睡気を示すナルコレプシーの発作と異なり,発作持続期間が長くかつ間歇期も週や月の単位であるため,中枢刺激剤の連用による副作用に十分な注意が要請されている。そして安全に長期間使用に耐える中枢刺激剤の種類が少ないため,その治療は必ずしも万全ではない。
 最近われわれは,発作を月に約1週間,規則的に繰り返す,かなり定型的な周期性傾眠症の例に,網様体賦活系の作用物質と考えられるカテコールアミンの増加を意図して,前駆物質L-DOPAを用いる治療を行なったところ,興味ある結果を得た。すなわちL-DOPAの単独投与では無効であり,かつmethyl-phenidate単独使用でも治療効果は認められなかったのに,両者併用によりはじめて発作を完全に消失させることができた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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