文献詳細
研究と報告
最近22年間のうつ病の臨床における変化
著者: 新福尚武1 柄沢昭秀1 山田治1 岩崎稠1 金井輝1 川島寛司1
所属機関: 1東京慈恵会医科大学精神神経科
ページ範囲:P.955 - P.965
文献概要
(1)うつ病患者数——うつ病患者は実数でも率でも増加している。
(2)うつ病の型および治療期間について——薬物療法の時代になってから現われた大きな変化の1つは治療期間の延長である。症例によっては,短期間に完全寛解に至って治療を終了しているものもあるが,一般的にいうと電撃療法時代より治療期間が延び,長期治療例が著しく増加している。この傾向は退行期うつ病および内因性うつ病においてとくに著しい。この主原因は,抗うつ剤投与で症状が一旦軽快したのち,軽躁・軽うつを波動的にくり返して安定しない例や軽快はしても薬物の減量,中止によって容易に再燃する例がふえていることにある。とくに循環型うつ病や退行期うつ病にこの傾向が著しい。しかしそのほか患者の治療に対するまたは治療者に対する依存性,および治療者自身の消極的な,または確信のない治療態度もその一因をなしていることが否定できないようである。
(3)うつ病の症状について——最近,内因性うつ病でも精神運動抑制や自責感,希死念慮などの症状の目立たない例が多くなった一方,身体症状や心気的愁訴の目立つ例が多くなっている。
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