icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学15巻9号

1973年09月発行

研究と報告

最近22年間のうつ病の臨床における変化

著者: 新福尚武1 柄沢昭秀1 山田治1 岩崎稠1 金井輝1 川島寛司1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学精神神経科

ページ範囲:P.955 - P.965

文献概要

 最近の約20年間におけるうつ病の臨床における変化を把握する目的で統計的検討を行なった。基礎資料は慈恵医大精神科開設当初の昭和23年から最近の45年に至るまでのうつ病患者で入院例321例,外来例の一部480例である。その結果の大要はつぎのようである。
 (1)うつ病患者数——うつ病患者は実数でも率でも増加している。
 (2)うつ病の型および治療期間について——薬物療法の時代になってから現われた大きな変化の1つは治療期間の延長である。症例によっては,短期間に完全寛解に至って治療を終了しているものもあるが,一般的にいうと電撃療法時代より治療期間が延び,長期治療例が著しく増加している。この傾向は退行期うつ病および内因性うつ病においてとくに著しい。この主原因は,抗うつ剤投与で症状が一旦軽快したのち,軽躁・軽うつを波動的にくり返して安定しない例や軽快はしても薬物の減量,中止によって容易に再燃する例がふえていることにある。とくに循環型うつ病や退行期うつ病にこの傾向が著しい。しかしそのほか患者の治療に対するまたは治療者に対する依存性,および治療者自身の消極的な,または確信のない治療態度もその一因をなしていることが否定できないようである。
 (3)うつ病の症状について——最近,内因性うつ病でも精神運動抑制や自責感,希死念慮などの症状の目立たない例が多くなった一方,身体症状や心気的愁訴の目立つ例が多くなっている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら