文献詳細
研究と報告
文献概要
骨肉腫などの診断のもとに下肢の切断術を受け,その後に幻影肢痛の生じた患者について,とくにその中の1例を中心に患者の対象関係に注目して,精神力動的観点からその発生メカニズムについて考察した。
(1)幻影肢痛は奇妙で独特な形容で表現され,いわゆる現実の痛みとは違うと訴えられるが,それは強い現実感をもって体験され,患者を極度の苦悩と焦躁のなかに陥らせている。
(2)幻影肢現象自体,身体像の存在を確証する事象であるが,その痛みの訴えにも「ひき裂かれる」,「焼け火箸を突っ込まれる」といった表現がなされ,明らかにそれまでの完全で健全な身体像の崩壊を示す形容がある。
(3)幻影肢に痛みの生ずる患者は,かつて彼のself-esteemと社会的役割を高めるために,とくに身体像のなかでも四肢の完全性を過大評価する傾向にあったといえる。
(4)そうした状態での四肢の切断は,自らの対象である自己の身体に向かっては,その完全性を失ったことの抑うつや,さらにまた侵されるのではないかという再発への不安を呼び起こす。
(5)一方外界の対象である身近かな愛する人に対しては,その人を失うのではないかという不安や,すでに拒絶され見捨てられたことへの怒りや恨みの感情を生ぜしめる。
(1)幻影肢痛は奇妙で独特な形容で表現され,いわゆる現実の痛みとは違うと訴えられるが,それは強い現実感をもって体験され,患者を極度の苦悩と焦躁のなかに陥らせている。
(2)幻影肢現象自体,身体像の存在を確証する事象であるが,その痛みの訴えにも「ひき裂かれる」,「焼け火箸を突っ込まれる」といった表現がなされ,明らかにそれまでの完全で健全な身体像の崩壊を示す形容がある。
(3)幻影肢に痛みの生ずる患者は,かつて彼のself-esteemと社会的役割を高めるために,とくに身体像のなかでも四肢の完全性を過大評価する傾向にあったといえる。
(4)そうした状態での四肢の切断は,自らの対象である自己の身体に向かっては,その完全性を失ったことの抑うつや,さらにまた侵されるのではないかという再発への不安を呼び起こす。
(5)一方外界の対象である身近かな愛する人に対しては,その人を失うのではないかという不安や,すでに拒絶され見捨てられたことへの怒りや恨みの感情を生ぜしめる。
掲載誌情報