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雑誌目次

雑誌文献

精神医学16巻12号

1974年12月発行

雑誌目次

巻頭言

新課題「船内精神衛生」と問題点

著者: 小沼十寸穂

ページ範囲:P.1026 - P.1027

(1)
 船内精神衛生とは,船長として船内の精神健康(精神衛生)管理に関する方策と処理への要請が,新しい問題として脚光を浴びることとなったので,これを端的にかように略称して新しい課題としたのである。
 これは船長側からの要請であって,日本船長協会で,この問題を検討するために,研究委員会を設定することとなり,労働心理学者の労研の狩野広之博士,船医経験者の海上労研の久我昌男博士ならびに私(労働精神医学者)の3名の特殊専門委員と船長協会側6名の船長職者とで,今春から研究を始めることとなったのである。

展望

感情障害とリチウムイオン

著者: 渡辺昌祐 ,   石野博志

ページ範囲:P.1028 - P.1052

Ⅰ.リチウムの歴史
 リチウムはギリシャ語でstoneを意味し,1817年スウェーデンの化学者Arfwedsonにより発見された。自然界では塩として,鉱物中ことにsilicalateや,海水,温泉の硬水に存在し,海産物,植物,動物,人間の体内にも微量ではあるが存在することが証明されているが,その生理的役割は不明である。
 リチウムがはじめて医薬として試用されたのは1859年で,Garroldが,尿酸の結晶がリチウム溶液に溶解されやすい性質に注目して,痛風患者の尿酸の蓄積を排泄するために用いたがその治療効果はほとんど認められなかった。臭化リチウムがブロームの化合物の一つとして,抗けいれん剤,鎮静剤として使用されたころもあるが,臭化リチウムが他のブローム化合物に比較してまさるとの所見は得られず放置された。

研究と報告

脳炎・髄膜炎後のてんかんの臨床経過と脳波所見の推移

著者: 高橋三郎

ページ範囲:P.1053 - P.1060

I.はじめに
 てんかんは古くヒポクラテスの時代から神聖病として,また近年は内因性精神病の1つとして,多方面からその病因や各種の発作症状,精神症状などが検討されている。一方いろいろの動物に人工的に痙攣などを誘発させる実験てんかんも,電気生理学的,生化学的および病理組織学的立場からそれぞれ研究され,ヒトにみられるてんかんの本態解明のうえで多くの有益な示唆を提供している。
 長年われわれの教室ではてんかんについて,その臨床面とともに実験的立場からも各種の研究を続け,臨床面については教室開設以来のてんかん患者についていくつかの報告をしてきた。数年前に教室の西堀らは昭和16年から35年までに初診したてんかん患者の予後調査を行い,その結果をすでに発表しているので,今回は昭和36年以後初診のてんかん患者についての調査を開始した。そのなかでも,大学病院という特殊事情にもより,臨床の実際場面でしばしば発作症状のコントロールに困難を感じたり,あるいはその特有の精神症状や性格の問題などで,治療上多くの困難を経験するいわゆる難治性てんかん例を観察する機会が多いため,今回はその原因の1つとしての脳炎・髄膜炎後にみられるてんかんに焦点をしぼった。この点に注目した今1つの理由は,従来から明らかな外因を有する症状てんかんの治療成績が真性てんかんに比し不良といわれ,この症状てんかんの1原因として脳炎・髄膜炎を挙げている報告が多いにもかかわらず,この問題に的をしぼった研究が非常に少ないためでもあったからである。

社会適応状況からみたてんかん患者の実態

著者: 渡辺敏也

ページ範囲:P.1061 - P.1070

I.はじめに
 てんかん患者の社会適応を考える場合には,患者らの置かれた社会的な背景や社会構造の変化を無視するわけにはいかず,時代の変遷と医学の進歩につれて患者に対する社会の見方もおのずと変ってきている。
 従来,てんかん患者の示す精神障害や性格変化などについての報告はきわめて多いが,社会精神医学的立場からの検討は比較的少ない。

うつ状態の光眼輪筋反射の観察

著者: 中野哲男

ページ範囲:P.1073 - P.1082

I.はじめに
 眼輪筋は物体あるいは光が突然視界に入ると,その視覚刺激に応じて反射的に収縮するが,これがすなわち視覚眼輪筋反射(visual orbicular reflex)あるいは網膜眼輪筋反射(retino-orbicular reflex)である。この反射の神経疾患診断上の重要性は末梢性顔面神経麻痺で反射の減弱がみられ,脳炎後パーキンソニスムス患者でこの反射の亢進がみられるということである27)
 稲永とその共同研究者7〜10,26,27)は,閃光刺激によって起こる眼輪筋反射を光眼輪筋反射(photopalpebral reflex,以下PPRと略す)と呼んで,小型電子計算機を用いて,ヒトのPPRについて観察を行ってきた。それによると,この反射は意識水準と密接な関連を持っており,精神安定剤の服用や酩酊状態の時にはPPRの平坦化が起こる。また,不安や緊張,精神活動などとも関連があり,飲酒時の発揚状態,痛みに対する予期不安や緊張の強い場合,精神活動の高まった場合などにはPPRの振幅が増大すると報告している。

古典紹介

—Ludwig Klages—Traumbewußtsein—II. Das Wachbewußtsein im Traume—その2

著者: 千谷七郎

ページ範囲:P.1083 - P.1097

(感覚と運動との極性聯関を,基本感覚としての触覚について解明する)**
 ここで私どもは,そもそもどんな工合に吾々の体験過程は自分自身を越えて出て行きながら,それにもかかわらず「超越している」ことに変りのないような現実に手を突っこむのか,ということの説明に着手することはできないので,ただこの謎解きは極性の概念を藉りて見出されたと思われることだけを示唆しておきたい。この極性概念は,ロマン期哲学が思索の大胆な投影で企画したものであるが,また残念なことに乱用に走ったために厳密な思考の側からの軽視を受けもしたものであった。そこで,ここでは論議する余裕がないが,感覚発生の或る理論からこの概念を取り上げて,感覚するものとされるものとの二つの共属する部分を,ともかくも一つの(無論意識されない)過程の双極と名づけるのは,単に手頃な言い回しの意味に取って頂きたい。それにしても,この理論の一点には触れておかねばならない。それは,後で述べる感覚過程の特徴は,伝統的理論と最も相容れない別種の想定を必要とするからである。——私どもは感覚過程を接触の生命状態と名づけ,そしてそのことによって,接触を惹起することを仕事とする感覚機能に或る基本感覚の役割が与えられることが少なくとも示唆された。私どもは実際に触覚が全感覚機能に関与していると信じるから,このことの解説には亙らない。ただほかならぬこの触覚について,私どもにとって肝要な命題を証明するだけにとどめたい。

海外文献

Amphetamine Psychosis—A “Model” Schizophrenia Mediated by Catecholamines/Das Schicksal der Melancholiker im fortgeschrittenen Alter

著者: 菊野恒明 ,   浅井昌弘

ページ範囲:P.1070 - P.1070

 Amphetamine psychosisは,acute paranoid schizophreniaとしばしば誤診されるほど臨床像が似ていること,分裂病治療に有効なphenothiazineが,同じく有効であることなどから従来paranoid schizoph,reniaのモデルとして考えられてきた。
 最近の知見によれば,amphetamineにより分裂病様症状が,誘発される病態生理,そしてphenothiazineの薬理学的機序に脳内dopamine systemがなんらかの役割を演じていることが推測される。

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精神医学 第16巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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