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文献詳細

雑誌文献

精神医学16巻2号

1974年02月発行

文献概要

展望

CNVと精神医学

著者: 一條貞雄12

所属機関: 1仙台鉄道病院神経科 2東北大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.116 - P.131

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I.はじめに
 CNVとはcontingent negative variationの略であり,1964年に英国の神経生理学者Walterらが,はじめて報告した脳波上の現象である105)。その実験方法は図1にも示すように,2種類の刺激を用い,第1の刺激S1(フラッシュ)が与えられた一定時間後に,第2の刺激S2(音)が出されたら,被験者ができるだけ速くボタンを押すなどの反応Rを行わせるものである。原法では6ないし12回の試行分が,誘発反応加算装置で加算平均されるが,記録上には第1の刺激S1のあと反応Rが行われる間に,ゆっくりとした陰性(上向き)の電位変動が現われ,これがCNVと呼ばれるものである。そして,このようにゆっくりした電位変動(slow potential change)は,脳波計の時定数が十分長い状態で観察できるものである。
 この実験では,第1の刺激S1に対しては被験者は何もしないのであり,第2の刺激S2にはじめて反応を起こすのであるが,その実験状況は,たとえば陸上競技などの「ヨーイ,ドン」に相当する。そこには,スタートの遅い人もあれば,またピストルの音が鳴らないうちに走り出す人もあるかもしれない。また,「ヨーイ」の合図のあとにピストルの引き金を引いたが,一音が鳴らなかったらどうであろう。火薬をつめ替えてふたたび引き金を引いたが,また鳴らず,2回,3回とピストルが鳴らなければ,競技者にとってはやれやれという気持になるであろう。どうもピストルのほうが具合いが悪そうだというので,別なピストルに取り替えると,競技者は今度こそはという気持になるであろう。競技者にはつぎに来たるべきものに対して確率論的な予測が働くのであり,そのような状況での脳波を記録しようとするのが,WalterらのいうCNVである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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