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イスラエルの精神医療
著者: 小池清廉12
所属機関: 1三重県立高茶屋病院 2現京都府立洛東病院精神科
ページ範囲:P.315 - P.323
文献購入ページに移動私は1971年の6月中旬から8月中旬まで,イスラエルのキブツ(Kibbutz)で生活し,その間,キブツに関連ある児童相談,集団教育に従事する教師や保母の教育機関,さらには国内各地の若干の精神病院や児童相談機関などを訪問し,何人かの精神科医,臨床心理専門家,ソーシャルワーカーらと接触する機会を持った。イスラエル訪問の主要目的はキブツにあったが,イスラエルには精神医学上興味深い問題が多く,またこれまで,わが国ではイスラエルを訪問した精神科医による紹介がないと思われたので,滞在期間も短く,言葉も不十分で情報は限られているが,見聞し感じたことを,当地で入手もしくは紹介された文献で補足しながら,簡単ではあるがイスラエルの精神医療について紹介してみたい。
ところで,ある国の精神衛生事情なり,精神医療の問題を,その国の歴史,文化,政治情勢と無関係に論ずることはもとより不可能なことであるが,とくにイスラエル共和国は地理的にも文化的にもわが国から遠く,彼の地の情報が最近豊富になったとはいえ,つねに情報は政治的であるから,現代におけるユダヤ人問題やパレスチナにおけるアラブ・イスラエル問題を詳細かつ冷静に把えることは容易でない。
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