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雑誌目次

雑誌文献

精神医学16巻4号

1974年04月発行

雑誌目次

巻頭言

二重の見当識

著者: 笠原嘉

ページ範囲:P.334 - P.335

 ほかの臨床科の人たちとつきあっていると,自分の考え方の異質な面をあらためて思い知らされる場合がよくある。それにはもちろんいろいろな理由があって,たとえば内科学や小児科学などの近年の進歩についてこちらが無知なためということもある。しかし,これはそうした純粋に知識レベルの差異によるだけでなくて,むしろ,精神科医以外の臨床医は明快で迷いのない方法論や疾患モデルや治療理論を共有しているようにみえるのに,私のほうはいつも多少とも曖昧さを伴う,いわば二重の見当識とでもいった中にいると感じる差異のほうが,より根本的なように思える。他科の人たちは,たとえば精神障害にしてもおしなべて体因的に解釈するか,あるいは逆に極端な心因論的解釈を下すかしがちであるが,いずれにしても彼らはいつも一重の見当識の中で生きているようにみえ,その当否は別として,自分の持っている二重性の厄介さからみると,一寸うらやましい。
 この二重性は,いうまでもなくまず,精神科医として心身両面への注目を余儀なくされるところから始まったのだろう。身体医学の方法論に加えて精神医学に独特の方法論を体得するために,われわれは医学部修了後いささかの年月を費やさねばならなかった。最初の数年,他科へ進んだ友人たちが着々と進歩していくのに比しこちらは手も足も出ないという思いであったことを憶い出す。治療論の面でも,原状回復ないしは欠陥治癒を目標とする医学一般の原理に加えて,もう一つ成熟という別系列の治療原理のあることも学ばねばならなかった。神経症ないしその関連病態を扱った者には自明のこの原理も,身体医学者にはなかなかわかってもらえない一つである。

展望

非定型精神病

著者: 武正建一

ページ範囲:P.336 - P.348

 非定型精神病は,すでに第58回日本精神神経学会および第3回世界精神医学会議(1961)でもシンポジアムの主題として取り上げられているが113),これと前後してわが国でも非定型精神病に関する研究報告が数多くみられる。主として躁うつ病と精神分裂病の間にあって,その経過,病像の点で両疾患の性質をかねそなえるために中間例として考えざるを得ないような疾患群は,Kraepelinによる早発性痴呆と躁うつ病の区別を基本とした精神医学大系が生まれてからの問題であったとみるのが正しいであろう。そして,内因性精神病が精神病理学的な状態像と経過に基づいた単位にとどまっている限り,またこれらを類型学的なものとしてみない限り,避けることのできない問題でもある。
 非定型精神病に関しては,遺伝精神医学的立場から定型群とは相違するものとして,これの分離を早くから主張していた満田はいうまでもなく5657),桜井87),黒沢43),諏訪103)らによってまとめられている。とくに諏訪は,「非定型精神病の概念」と題する本誌展望(1963)の中で,1)これらを独立した疾患単位として認めようとする,Schroder,Kleist,Leonhardらの変質精神病に発する考え方,2)分裂病と躁うつ病の間にある非定型病像ないし中問例を類型学的な見方によって処理し得るとするJaspersやSchneider, K. そしてPauleikhoffらの見解,ならびに 3)Kraepelinによる二分主義を認める点では類型学的立場と近似するが,体型や性格,そして遺伝的要因を考慮することによって,非定型精神病は精神分裂病と躁うつ病の混合であるとするGaupp,Mauz,Kretschmerらの諸論を詳細に述べている。

研究と報告

アルコール幻覚症者の体験と行動—救助を求める行動としての放火

著者: 福島章

ページ範囲:P.349 - P.358

 (1)アルコール幻覚症による放火の3例と,アルコール幻覚症類似の症状を示した覚醒剤中毒による放火の1例を報告した。
 (2)包囲攻撃状況,被害妄想など,従来アルコール幻覚症に特徴的とされていた症状が,他の薬物乱用によっても認められること,これらの妄想内容と患者の置かれている「たよりない状況」との間には心理的了解関連を認め得ることを論じた。
 (3)従来の文献によれば,アルコール幻覚症者の問題行動として逃走,自殺,まれに殺人が報告されているが,本論文の症例がすべて放火であったことの理由を考察した。彼らは「たよりない状況」において,当然援助を求める欲求を抱くであろうが,それが放火などの行動として遂行される背景には,依存欲求の抑圧をかならずしも強制しない日本的心性などの関与が推測される。

嗜癖者の病跡学的研究—その1 田中英光について

著者: 米倉育男 ,   松本善男 ,   村本幸栄

ページ範囲:P.359 - P.367

I.はじめに
 アルコールであれ,薬物であれ,従来の研究は,それらによって侵襲された生体に生じた中毒現象を対象としてきた。しかし,今世紀初頭からその興味はしだいに中毒現象の基底に存在する人格の解明や,嗜癖者の人間学的探求へと向けられるようになった。
 このような方向に対して,病跡学は個々の嗜癖者の人間を理解し,嗜癖性を究明するうえに有用な手段となり得ると考えられる。

対人恐怖症における愛と倫理(その4)—ニーチェの病跡学(続篇)

著者: 内沼幸雄

ページ範囲:P.369 - P.378

I.はじめに
 第1報と第2報で対人恐怖症の精神構造について論考し,さらにそれに基づいてニーチェの病跡を三島由紀夫の場合と比較しながら,主として精神病理学的視点から把えたのが,第3報であった。ニーチェの病跡学的考察において心理学的解釈を先行させたのにはとくに他意はないが,あえていえば,いままでのニーチェの病跡学的研究が進行麻痺説という身体医学的視点にあまりにも偏りすぎていたからである。たとえ1888年末のニーチェの精神的崩壊が進行麻痺であったにしても,ニーチェの精神状態を対人恐怖症性パラノイアとする解釈は成り立つのである。というのは,脳器質的疾患とパラノイアとが合併することは,あり得ないことではないからである。とはいえ,彼の脳器質的疾患が進行麻痺であったと,単純に割りきれないことはいうまでもなく,また,さまざまな症状をできるだけ単一の疾患に還元していくべきであるという医学の一般原則に従うならば,合併説をとるからにはよほどの慎重さを必要とする。いったい,そもそもニーチェは進行麻痺であったのか。
 いままでの病跡学的研究ではニーチェ進行麻痺説が主流を占め,優れたニーチェの理解者であるヤスパース21)の用意周到な批判にもかかわらず,その説が多くの人たちによって無批判に受け入れられていた。とすれば,パラノイア説をとるからには,進行麻痺説に対する私の態度を明らかにしておかなくてはなるまい。それにまた,パラノイア問題自体が現代の精神医学では不当に軽視されており,とくに日本では無きに等しいのが現状である。以下,この2つの問題について第4報と第5報で私の見解を示しておこうと思う。

急激な運動によって誘発される舞踏病様不随意運動発作の1症例—活性アミンとの関連

著者: 服部隆夫

ページ範囲:P.379 - P.385

I.まえがき
 急激な運動を開始することによって発作的に起こる不随意運動についてはMount and Reback1)(1940)のfamilial paroxysmal choreoathetosisをはじめとしparoxysmal choreoathetosis8),paroxysmal kinesigenic choreoathetosis13)などの報告があった。1961年福山ら16)は,これらの類似する症例を検討し,遺伝に規定される一独立疾患として,遺伝性運動覚反射性てんかんhereditary kinesthetic reflex epilepsy(HKRE)という病名を提唱し,その本態についての考察と疾患分類学的位置づけを試みている。私はこれらと類似の症状が家族性にみられる症例を経験したので,これについて若干の検討を試みる。

向精神薬療法中の脳波変化とその継時的観察

著者: 越野好文 ,   榎戸秀昭 ,   松本完治 ,   松岡宗里 ,   中川芙佐子 ,   大塚良作

ページ範囲:P.387 - P.396

 症状が重篤なため通常の臨床使用量の範囲内で中等量ないし多量の向精神薬が使用された,16歳から23歳(平均19歳)の精神分裂病患者5例(男1人,女4人)の継時的脳波変化と臨床経過,服薬について報告した。
 これらの症例にてんかん性素因はなく,服薬前脳波に粗大な異常所見は認められなかった。向精神薬服用後律動的なθバースト,不規則なδバースト,陽性棘波および小さい棘波を持つ5〜6c/secの速い周波数の棘徐波結合が出現した。継時的観察の結果,これらの脳波変化は臨床経過よりも向精神薬服用との関連性が密接であった。
 服薬中断を行った3例中2例では2〜3週間で正常脳波に戻ったが,他の1例は服薬中断後4〜10日にかけて脳波変化は一時中断直後よりむしろ高度となった。この症例の脳波異常の程度はその後軽快したが,16日間の観察期間中に完全には正常化しなかった。
 精神分裂病患者において向精神薬により脳波変化を生じることは決して稀な例外的なことではない。向精神薬服用中あるいは服用の経験のある人の脳波に棘波成分や徐波成分を見た時は,その意味づけに十分な注意が必要であり,継時的観察を行うべきであると強調した。

炭酸リチウムの躁うつ病者脳波に及ぼす影響

著者: 大熊輝雄 ,   竹下久由 ,   中尾武久 ,   内田又功 ,   岸本朗 ,   譜久原朝和 ,   松島嘉彦 ,   小林清 ,   福間悦夫 ,   小椋力 ,   福田武雄 ,   角南譲

ページ範囲:P.397 - P.408

I.はじめに
 リチウム療法はCade4)(1949)によって創始されて以来,躁状態だけでなくうつ状態に対しても有効8,24)であることや,躁うつ病の病相の反復に対して予防効果があること1,14,25)などが知られており,現在操うつ病に対する主要な治療法のひとつとして広く行われている11,12,31)。しかし,この薬物は,神経系・循環器系・消化器系・泌尿器系などに対してある程度の副作用6,27,29,30)を有するため,臨床的使用にさいしては用量に注意する必要があり,血中濃度を測定しながら慎重に使用することが望ましいとされている。そして,リチウムの中枢神経系に対する作用の様態ならびに副作用を検索するためには,脳波検査がかなり役立つと思われる。
 リチウムが脳皮に及ぼす影響については,古くはCorcoran, A. C. ら6)(1949)がリチウム中毒患者に全般性高振幅徐波が認められたことを報告している。その後Passousantら26)(1953),Schouら29)(1968)は,炭酸リチウム与薬の場合には,中毒症状を示さない症例にも6〜7Hzのθ波の増加や群発,棘波,棘徐波複合などの出現などがみられることがあると報告している。わが国では岸本ら18)(1972)が,炭酸リチウム使用時に全般性けいれん発作を起こした症例の脳波像を詳しく記載し,江原ら9)(1973)は躁うつ病5例,躁病1例,うつ病2例など合計11例について炭酸リチウム与薬のさいに,4〜7Hzのθ波の増加・群発などの所見が認められると報告しているにすぎない。

短報

新抗うつ剤Lopramine(DB-2182)の臨床使用経験

著者: 村崎光邦 ,   佐藤喜一郎 ,   望月保則 ,   菅原道哉 ,   原俊夫

ページ範囲:P.409 - P.411

I.はじめに
 Lopramine(DB-2182)はiminodibenzyl誘導体に属する新しい三環系抗うつ剤で,図のように側鎖のアミノ基が4′-chlorophenacyl groupで置換されたtertiaryamineである。薬理試験で末梢性抗コリン作用が弱く,口渇,便秘などの副作用が少ないと考えられ,動物実験では鎮静作用より興奮作用が強く,思考,意志の制止の改善に,より有効ではないかと推測されている3)。今回われわれは本剤を各種のうつ状態に使用する機会を得たので,その臨床結果を簡単に報告する。

古典紹介

Karl Ludwig Kahlbaum:Ueber Heboïdophrenie

著者: 浅井昌弘 ,   保崎秀夫

ページ範囲:P.415 - P.422

 私が類破瓜病(Heboidophrenie)というのは,青年期に出現し,その症状の特徴が今までに述べられている精神的疾患形態のいずれのものにも一致しないような精神的疾病状態のことである。その特徴とはすなわちつぎのごとくである。
 1)全体的態度の偏倚。とくに社会的関係における人間の精神的個性を構成し,あるいは性格とか,あるいは人格とか,またあるいは気質とか呼ばれているものを含めた,心的特性の複合体についての偏倚と異常。

解説

—K. L. カールバウム 著—「類破瓜病について」

著者: 保崎秀夫

ページ範囲:P.422 - P.424

 Kahlbaumは別掲の略年表の示すように,また内村祐之名誉教授の「精神医学の基本問題」の中のKahlbaumについての詳しい業績の紹介にもあるように,精神医学の臨床の場からすべてを出発させた人である。当時の組織病理学的,病理解剖学の支配的時代に―もっとも彼もHeckerに病院をまかせて短期間PragとWienで病理学を学んだとあるが―,臨床観察から疾患の経過を重視し,疾患そのものから状態像を区別し,身体疾患に伴う精神障害を区分するなどの,今日の状態像や症状群を重視し,状態像と疾患を区別する方向をすでに示していたことは,彼の業績が最も評価される点である。ただHeckerもいっているように,彼のことを「新しい命名のSuchtの傾向がある」と批判する人があるそうであるが(しかもその命名に適合した症例の報告が必ずしも十分でないという批判も),たしかにVesania,Vecordia,Dysphreniaをはじめとする新しい用語はその後あまり用いられないがKatatonie,Hebephrenie,Heboidophrenie,Flexibilitas cerea,Verbigeration……などは今日でも用いられている。関連の文献を読んでも,Paralyse(身体的基盤のはっきりした)に対し,筋緊張を(麻痺に対し)重視してKatatonie,Spannungsirreseinを提唱したり,NeumannのEinheitspsychoseにほぼ相当したものとしてVesania typica(簡単にいうと,メランコリー,マニー,錯乱と経過し,治癒せぬと痴呆に至る病型),この全体的人格障害に対し,部分的なものとしてDysthymia(感情面が主としてやられる),Paranoia(知能面が主),Diastrephia(意志面が主)らを一緒にしてVecordiaと呼び,身体疾患にみられる精神障害をDysphreniaと呼んでいるのはある程度理解できるが,彼自身の疾患分類がchronologicalにどのような内容的な変化を追っていたものか,いまだはっきりしない点がある。彼は大学の教職を希望したが,最後までそれが果たされず,そのために小人数での精神病院での業績であったために,裏づけや発展や,周知させることに不十分であったといわれているが,反面,患者と病院勤務医師との密接な接触があったからこそ素晴らしい業績が出たといえよう。
 直接の師を持たなかったこと,Heckerという弟子(と同時に彼の親類を最初の妻として迎えている)を得たこと,HebephrenieもKahlbaumの発想と指示でHeckerが仕事をまとめたこと,自然科学一般にも興味を持っていたことなども経歴の中に現われている。

資料

精神科思春期外来診療上の問題点

著者: 清水将之 ,   北村陽英 ,   西口俊樹 ,   辻悟 ,   藤本淳三 ,   和田慶治 ,   吉田脩二

ページ範囲:P.425 - P.431

I.はじめに
 思春期精神医学という表現がわれわれの眼に留まるようになってから,まだ十数年しか経過していない。この領域の論文は国の内外ともにかなり発表されるようになってきてはいるが,これはいまだ精神医学における一つの実践および研究の領域として確立するには至っていないと思われる。Keyserlingk, H. V. 5)は,児童精神医学が当初は成人精神医学の観点より扱われ,「子どもは小さなおとなと見られていた」と語っている。これと同様のことが,思春期青年に対する精神医学的アプローチにおいても,いまだに認められる。思春期として概括されている年代の患者は,おそらくは,児童期の延長として児童精神科医により,あるいは,成人予備軍として成人患者とともに扱われているのが現状ではなかろうか。たとえば,東京大学精神科8),京都大学精神科9),大阪日赤病院精神科4)では,児童クリニック対象患者の上限を15歳としている。しかし,われわれの臨床経験では,12〜13歳ごろに精神発達史上の一転換期があるように考えられる。
 思春期という用語が何歳から何歳までを指すかについては多くの意見があり,定説はない7)。しかし,とくに第二次世界大戦後,多くの領域において思春期に関する研究が発展したことにより,おおよそ十代の一時期が,児童期にも含め難く,さりとて成人として遇するにも問題の多すぎる,独立した心身発達史上の一時期であることが,しだいに明らかになってきている。

紹介

—Göppinger, H. u. Witter, H. 編著—Handbuch der forensischen Psychiatrie

著者: 中田修

ページ範囲:P.433 - P.438

 本書すなわち「司法精神医学全書」は2巻,4部から成る,合計1,693頁という厖大な本である。このような大著を短時間に通読することは容易ではない。それゆえ,本書の構成,本書が司法精神医学の歴史のなかで持つ意義,本書から得られる司法精神医学的見解の時代的変遷などについて述べるにとどめたい。本書の印象を一言で言えば,大きな本ではあるが,内容は多彩で,比較的平易に書かれてあるので,取りつきやすい本である。
 本書の編集者はH. GöppingerとH. Witterの両教授である。Goppinger教授はチュービンゲン大学犯罪学研究所長であり,個々の犯罪者について多元的・総合的研究を徹底的に推進しており,「犯罪学」(C. H. Beck, München,1971)の著者でもある。筆者の知るところでも,2度来日されたことがあり,筆者も一昨年その講演を聴いた。隻脚が痛々しいが,冷徹な理論家といった印象であった。Witter教授はザールラント大学司法心理学・精神医学研究所長であり,情動犯罪や拡大自殺の責任能力論,あるいは不可知論者として知られ「司法心理学・精神医学綱要」(Springer, Berlin,1970)の著者でもある。なお,GöppingerもWitterもいわゆる正統的な精神医学の道を歩む学者であり,精神分析や現存在分析とは縁が遠いようである。

海外文献

Zur Behandlung der Narkolepsie mit L-DOPA—Klinische Verlaufsbeobachtungen und polygraphische EEG-Nachtschlaf-und Tagesableitungen,他

著者: 上島国利

ページ範囲:P.378 - P.378

 ナルコレプシーは,睡眠発作,情動脱力発作,入眠時幻覚,睡眠麻痺を四大症状とする疾患であるが,その薬物療法は満足とはいえない。睡眠発作はアンフェタミン投与で減少するが嗜癖や習慣性の危険があり長期持続投与は困難である。脱力発作に対するイミプラミン療法も発作の一部にしか有効でなく,その作用機序も逆説睡眠を抑制する作用が関係しているらしいが,詳細は不明である。ナルコレプシーの睡眠発作は逆説睡眠と徐波睡眠の調整の障害に還元され,逆説睡眠はMAOI(モノアミンオキシダーゼ阻害剤)でも抑制されるが,イミプラミンを含めて睡眠発作に与える影響は少ない。
 一方脳幹のカテコールアミン神経系は,覚醒状態と同様逆説睡眠の保持に重要であり,ドーパミンーノルアドレナリン合成の前駆物質であるL-DOPAは注射により覚醒反応を起こすことが知られ,パーキンソン病患者に投与し夜間睡眠状態を検査したところ,逆説睡眠出現を約1時間抑制し,深睡眠を抑え睡眠段階の連続を正常化することが認められた。これらの事実をふまえて,著者らはナルコレプシーの治療にL-DOPAを使用している。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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