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研究と報告
炭酸リチウムの躁うつ病者脳波に及ぼす影響
著者: 大熊輝雄1 竹下久由1 中尾武久1 内田又功1 岸本朗1 譜久原朝和1 松島嘉彦1 小林清1 福間悦夫1 小椋力1 福田武雄2 角南譲3
所属機関: 1鳥取大学医学部神経精神科 2松江赤十字病院精神科 3松江市立病院精神神経科
ページ範囲:P.397 - P.408
文献購入ページに移動リチウム療法はCade4)(1949)によって創始されて以来,躁状態だけでなくうつ状態に対しても有効8,24)であることや,躁うつ病の病相の反復に対して予防効果があること1,14,25)などが知られており,現在操うつ病に対する主要な治療法のひとつとして広く行われている11,12,31)。しかし,この薬物は,神経系・循環器系・消化器系・泌尿器系などに対してある程度の副作用6,27,29,30)を有するため,臨床的使用にさいしては用量に注意する必要があり,血中濃度を測定しながら慎重に使用することが望ましいとされている。そして,リチウムの中枢神経系に対する作用の様態ならびに副作用を検索するためには,脳波検査がかなり役立つと思われる。
リチウムが脳皮に及ぼす影響については,古くはCorcoran, A. C. ら6)(1949)がリチウム中毒患者に全般性高振幅徐波が認められたことを報告している。その後Passousantら26)(1953),Schouら29)(1968)は,炭酸リチウム与薬の場合には,中毒症状を示さない症例にも6〜7Hzのθ波の増加や群発,棘波,棘徐波複合などの出現などがみられることがあると報告している。わが国では岸本ら18)(1972)が,炭酸リチウム使用時に全般性けいれん発作を起こした症例の脳波像を詳しく記載し,江原ら9)(1973)は躁うつ病5例,躁病1例,うつ病2例など合計11例について炭酸リチウム与薬のさいに,4〜7Hzのθ波の増加・群発などの所見が認められると報告しているにすぎない。
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