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精神科思春期外来診療上の問題点
著者: 清水将之1 北村陽英1 西口俊樹1 辻悟1 藤本淳三2 和田慶治2 吉田脩二2
所属機関: 1大阪大学医学部精神医学教室 2大阪府立中宮病院
ページ範囲:P.425 - P.431
文献購入ページに移動思春期精神医学という表現がわれわれの眼に留まるようになってから,まだ十数年しか経過していない。この領域の論文は国の内外ともにかなり発表されるようになってきてはいるが,これはいまだ精神医学における一つの実践および研究の領域として確立するには至っていないと思われる。Keyserlingk, H. V. 5)は,児童精神医学が当初は成人精神医学の観点より扱われ,「子どもは小さなおとなと見られていた」と語っている。これと同様のことが,思春期青年に対する精神医学的アプローチにおいても,いまだに認められる。思春期として概括されている年代の患者は,おそらくは,児童期の延長として児童精神科医により,あるいは,成人予備軍として成人患者とともに扱われているのが現状ではなかろうか。たとえば,東京大学精神科8),京都大学精神科9),大阪日赤病院精神科4)では,児童クリニック対象患者の上限を15歳としている。しかし,われわれの臨床経験では,12〜13歳ごろに精神発達史上の一転換期があるように考えられる。
思春期という用語が何歳から何歳までを指すかについては多くの意見があり,定説はない7)。しかし,とくに第二次世界大戦後,多くの領域において思春期に関する研究が発展したことにより,おおよそ十代の一時期が,児童期にも含め難く,さりとて成人として遇するにも問題の多すぎる,独立した心身発達史上の一時期であることが,しだいに明らかになってきている。
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