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文献詳細

雑誌文献

精神医学16巻5号

1974年05月発行

文献概要

古典紹介

Ewald Hecker:Die Hebephrenie:Ein Beitrag zur klinischen Psychiatrie

著者: 赤田豊治1

所属機関: 1東京女子医科大学神経精神科学教室

ページ範囲:P.505 - P.524

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 精神障害を臨床的に観察すれば,最初一瞥しただけで,それぞれに特有な経過様式により互いに明瞭に区別される,二つの主要部類のあることがわかる。第一の部類においては一度出現した状態型が,全疾病経過を通じて存続するのに対し,第二の部類は特徴として一連の様々な状態像,すなわち一定の継起に従いメランコリー,マニー,錯乱(Verwirrtheit)から痴呆(Blödsinn)に至る諸段階を示すのである。後者の部類はまた,多数の特有な病像を包含するが,分類に対する反対者たちが精神疾患の,とにかく唯一の存在する形態であると見做そうとしているのが,この部類なのである。にもかかわらず彼らも,「精神病者の全身進行麻痺」“allgemeine progressive Paralyseder Irren”を一つの特殊な疾病形態として立てざるを得ないのであるが,その然るべき十分な理由は正につぎの点に存する。すなわちこれらの諸例は事実,非常に特有な経過様式,多くの顕著な定型的症候およびきわめて明白な予後を持つので,疑いなく境界截然たる一つの臨床的疾病像を成すものであって,この進行麻痺の病像は同様にメランコリー,マニーなどの諸段階を,多かれ少なかれ規則的継起をもって経過するところの,いわゆる定型精神病Vesania typica(Kahlbaum)から截然と区別されなければならない,という点である。
 全身麻痺の精神的徴候のうち,とくに特徴的なものとして,Westphalが,精神的衰弱(geistige Schwäche)の早期出現,そのはなはだ速やかな進行を挙げたのは間違っていない。メランコリーとかマニーという初期の段階においてすでに,迅速に進行する痴呆の色彩が混入してくる。つまり精神的崩壊は,ほとんど発病と同時に開始するのである。―この確かに顕著な徴候は,そのほかには進行麻痺とあまり共通点を持たない,もう一つの疾病形態にも現われることを,Kahlbaumはその講義の中で最初に注意したが,それは彼の立てた破瓜病(Hebephrenie)である。これは同様にさまざまの状態像を示す精神障害の一形態であって,思春期の年頃に引き続いて始まり,この時期に進行する心身発育の大きな飛躍と密接に関連するものである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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