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文献詳細

雑誌文献

精神医学16巻7号

1974年07月発行

文献概要

研究と報告

抗てんかん剤の催奇性

著者: 福島裕1 三川博1

所属機関: 1弘前大学医学部神経精神医学教室

ページ範囲:P.701 - P.707

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I.はじめに
 近代の医薬品の発達は,臨床の各分野の治療に多大の恩恵を与えてきたが,同時に一方では,薬害発生の可能性を高めたことも否定できない。なかでも,1950年代の末からしだいに明らかにされたThalidomideによる特異な奇形の発生は,薬害の問題を社会的な関心にまで高めた事件として記憶に新しい。
 このような状況のもとで,各種治療薬のteratogenicity催奇性(あるいは催奇形性)についてMellin19)(1964)やNelsonら21)(1971)の広範な調査成績の報告がなされ,またわが国でも西村ら22)(1972)がこの問題について総説的に記述している。これらの報告や記述をみると,現在臨床において広く使用されている薬剤のなかにも,その催奇形作用が疑われるものが少なくないことを知らされる。もっとも,人体に対して明らかな催奇性を有する薬剤として現在までに確認されているものは,I131,Thalidomideなど数種類にすぎないという22)。しかし,いうまでもなく,日常の臨床において,医薬品の催奇性の問題はきわめて重大な関心事である。ことに,日常使用されることの多い薬剤にあっては,その催奇形作用が軽度なものであったとしても,奇形発生の度数は大きくなるわけで,これを過少に評価することはできない。そして,現在少なからぬ薬剤でその催奇性が疑われている以上,Mellin19)やNelsonら21)が警告するごとく,妊娠初期あるいは受胎可能期間における安易な薬剤服用は避けなければならない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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