文献詳細
古典紹介
—Serger S. Korsakoff—Eine psychische Störung combiniert mit multiple Neuritis—Psychosis polyneuritica seu Cerebropathia psychica toxaemica
著者: 池田久男1
所属機関: 1岡山大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.719 - P.723
文献概要
実際にこの病気は,しばしば,その発症が気付かれないことがある。何故ならば,この病気は普通産褥熱やチフスなどの重症な疾患の合併症として出現するので,その初発症状は神経系の普通の衰弱あるいは疲労とか,脳の貧血と混同される。発症時には普通患者は嘔吐し,時にはそれが非常に頑固で,著しい衰弱が起こっている。それまで歩いていた患者は,ふらつき,歩行は不確実となり,ついにはもはや立ち上がることができず,臥床してしまう。下肢の麻痺徴候は明らかとなり,そのさいとくに膝関節での伸展や,足や趾の運動が侵されることが多い。非常にしばしば下肢の麻痺徴候も加わり,しかも手や指の運動がまず侵されることが多い。しばしば同時に,腕や大腿に疼痛が現れ,筋は著しく萎縮し,電気刺激による収縮は消失し,拘縮や時には浮腫が出現する。膝蓋腱反射は普通早期に消失する。重症例では四肢は完全に麻痺し,また躯幹筋,膀胱や横隔膜も麻痺し,ついには迷走神経機能の障害による心臓の麻痺も起こしてくる。
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