文献詳細
展望
文献概要
I.はじめに
情動行動の中枢機構を分子レベルで解明していくことは,精神医学領域の疾患の原因,治療および予防の解明につながる根本的な問題であり,また,中枢神経のcellular biochemistryの終局的目標の1つでもある。神経細胞の興奮および抑制は,synapseにおけるchemicalsignalである神経伝達物質(neurotransmitter)を介して生じており,synapseにおけるこの動態の解明が,情動行動の中枢機構の解明と直接の関連を持っている。最近4〜5年の間に,aggressionとneurotransmittersとの関連について多くの報告がなされてきた。著者らは,情動行動とneurotransmittersとの関連についての研究に着手しているが,このさい最近の文献をまとめ,今後の方向を考えてみたいと思うのがこの総説的な試みの目的である。
ところで,自然科学的方法によるこの領域の研究は,心理学的次元と生物学的次元の間にみられる相関した変化を追求していくことになる。しかし,情動行動という心理学的現象を次元の異なる生化学的レベルで把えようとするとき,これらの現象の特異性を単に生化学的な物質のレベルに求めるだけで解決するだろうかという根本的な方法論の問題がある。脳は,構造的にも機能的にもあまりにも不均一,複雑な臓器であり,量的あるいは部位的変化が,他の次元では質的な変化として現れる。
情動行動の中枢機構を分子レベルで解明していくことは,精神医学領域の疾患の原因,治療および予防の解明につながる根本的な問題であり,また,中枢神経のcellular biochemistryの終局的目標の1つでもある。神経細胞の興奮および抑制は,synapseにおけるchemicalsignalである神経伝達物質(neurotransmitter)を介して生じており,synapseにおけるこの動態の解明が,情動行動の中枢機構の解明と直接の関連を持っている。最近4〜5年の間に,aggressionとneurotransmittersとの関連について多くの報告がなされてきた。著者らは,情動行動とneurotransmittersとの関連についての研究に着手しているが,このさい最近の文献をまとめ,今後の方向を考えてみたいと思うのがこの総説的な試みの目的である。
ところで,自然科学的方法によるこの領域の研究は,心理学的次元と生物学的次元の間にみられる相関した変化を追求していくことになる。しかし,情動行動という心理学的現象を次元の異なる生化学的レベルで把えようとするとき,これらの現象の特異性を単に生化学的な物質のレベルに求めるだけで解決するだろうかという根本的な方法論の問題がある。脳は,構造的にも機能的にもあまりにも不均一,複雑な臓器であり,量的あるいは部位的変化が,他の次元では質的な変化として現れる。
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