文献詳細
文献概要
研究と報告
精神分裂病者の諺への反応
著者: 山口隆1 轟俊一1 野上芳美1 細木照敏2 大森淑子3
所属機関: 1日本大学医学部精神神経科 2東京大学医学部精神衛生学教室 3医療法人青山会・青木病院
ページ範囲:P.763 - P.770
文献購入ページに移動精神分裂病の思考障害(formal thinking disorder)を明らかにする目的に諺が使用されたのは,BenjaminによればBeringer, Gruhleに始まるという2)。しかし,はじめて比較的系統的に分裂病者の諺解釈を観察したのはBenjaminであり,このあとを受けてGorham8)は諺テストの形式を定めた。わが国では黒田ら13)の諺テストの報告がある。
分裂病者を対象とした初期の臨床診断およびテストへの諺の応用の意図は,その思考障害のうちでもとくに諺のなかに含まれている陰喩(metaphor)を正しく汲み取るか否か,換言すれば諺のうちに象徴的に表現されている裏面の意味の把握の仕方はどうかという点に存した。これはKasanin11)やGoldstein7)の《具体的対抽象的》(concrete vs.abstractive)なる対概念と対応して興味を抱かれたものであった。もっともBenjaminもすでに"知的な"分裂病者が"軽度に知的欠陥のある"非分裂病者よりも諺を一層字義的に解釈する事実に注目し,Goldsteinらが示唆した分裂病者と脳損傷者との類比につき必ずしも同意見でなかったことは重視されねばならないであろう。
掲載誌情報