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展望
うつ病の臨床精神医学的研究の動向(1959-1973)
著者: 木村敏1
所属機関: 1名古屋市立大学医学部神経精神科
ページ範囲:P.4 - P.32
文献購入ページに移動この展望は平沢(1959)による1945-1958年の期間の展望を継承して,1959-1973年の15年間におけるうつ病の臨床精神医学的研究の動向を綜説しようとするものである。範囲を臨床面に限ったため,この15年間に格段の進歩を遂げた生化学的研究をはじめ,基礎医学的・身体医学的研究はすべて除外した。同じくこの期間の代表的成果ともいうべき薬物療法についての研究も,対象があまりにも厖大であるために除外せざるを得なかった。さらに主として時間的な理由から,日本語のほかは英語とドイツ語の文献にしか眼を通すことができなかったのは残念である。
この15年間のうつ病研究の動向は,若干の目立った特徴によって,それ以前の時期からかなりはっきりと区別される。そのような新しい傾向を促進した契機としては,(1)力動的・状況論的・人間学的な観点が有力になってきたこと,(2)抗うつ剤の開発が進んで,うつ病の治療法が一変しただけでなく,われわれの眼に触れるうつ病像そのものの変化をももたらしたこと,の2点が挙げられるのではないかと思う。
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