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研究と報告
分裂病再発の危機状況について
著者: 高橋隆夫1
所属機関: 1岐阜大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.43 - P.49
文献購入ページに移動Ⅰ.序言
精神病の既往者たちの治療を続けているさいに,われわれが直面する最も重大で困難な問題の1つに"精神病の再発"がある。それゆえ,この"再発の危機"なるものを予知し,これを未然に防止していくことは,また再発が生じてしまった場合には,これをいかに軽度にとどめかつ短期間に治めるかということは,精神科臨床に携わる者に課せられたきわめて重要な問題であると考える。
筆者は最近の数年の間に,退院後かなりの長期間にわたって通院治療を続けてきた分裂病既往者たち――"分裂病"なる診断名はおおむねE. BleulerないしK. Schneiderに従い2,15),予後にこだわらないためにあえて"既往者"としておく――のうちで,再発を来した数症例に関して述べ,これらのことからとくに"再発の危機状況"について論じ,また筆者が再発した病者たちとともに,あるいは彼らの意に反して,いかなる行動をとっていったか,またはとるべきであったかを述べてみたいと思う。また,この"再発"なるものが,必ずしも分裂病既往者たち自身の精神病理的症状の出現によって判断されるとは限らず,家族や周囲の人々によって既往者たちの当然とって然るべき態度や言動が"再発"したと判断され,たとえば"入院"といった手段がとられてしまう危険性があるということについても,症例を挙げて具体的に論じておこうと思う。
精神病の既往者たちの治療を続けているさいに,われわれが直面する最も重大で困難な問題の1つに"精神病の再発"がある。それゆえ,この"再発の危機"なるものを予知し,これを未然に防止していくことは,また再発が生じてしまった場合には,これをいかに軽度にとどめかつ短期間に治めるかということは,精神科臨床に携わる者に課せられたきわめて重要な問題であると考える。
筆者は最近の数年の間に,退院後かなりの長期間にわたって通院治療を続けてきた分裂病既往者たち――"分裂病"なる診断名はおおむねE. BleulerないしK. Schneiderに従い2,15),予後にこだわらないためにあえて"既往者"としておく――のうちで,再発を来した数症例に関して述べ,これらのことからとくに"再発の危機状況"について論じ,また筆者が再発した病者たちとともに,あるいは彼らの意に反して,いかなる行動をとっていったか,またはとるべきであったかを述べてみたいと思う。また,この"再発"なるものが,必ずしも分裂病既往者たち自身の精神病理的症状の出現によって判断されるとは限らず,家族や周囲の人々によって既往者たちの当然とって然るべき態度や言動が"再発"したと判断され,たとえば"入院"といった手段がとられてしまう危険性があるということについても,症例を挙げて具体的に論じておこうと思う。
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