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文献詳細

雑誌文献

精神医学17巻12号

1975年12月発行

研究と報告

Behçet病の中枢神経症候—とくにその精神症状の特徴について

著者: 池田久男1 石野博志1 岡本繁1 難波玲子1

所属機関: 1岡山大学医学部神経精神医学教室

ページ範囲:P.1295 - P.1305

文献概要

I.はじめに
 Behçet病は再発性の口腔および外陰部アフタ性潰瘍,およびブドウ膜炎を主徴候とする,原因不明の全身疾患である。本疾患患者の10〜20%に神経・精神症状の発現があり9,25),この病態をとくにNeuro-Behçet病と呼んでいる。この神経・精神症状の発現は,患者の生命予後や社会適応に大きく影響することから,失明に導びく眼症状とともに,本疾患の臨床上重要な問題である24)。それにもかかわらず,Neuro-Behçet病の中枢神経症状,とくに精神症状に関する従来の記載や研究は少なく16,28),不充分であるといわねばならない。文献的にも,本疾患患者の精神状態を単に「痴呆」,「コルサコフ症候群2)」とのみ表現しているものが大多数である。この点,本疾患と臨床的に,病態生理学的に諸々の共通点をもつエリテマトーデスの患者の示す精神症状に関して,多くの研究や報告がなされているのと対照的である7,8)
 「痴呆」は慢性器質性脳症候群の中核症候として今日理解されているが,この痴呆の臨床概念に歴史的変遷があり12),また諸家の立場によって,この言葉が示す精神症状は必ずしも一致していない。ある学者は知的構造の基本障害に対し痴呆と呼び13),他の学者は精神活動全体の不可逆的崩壊を痴呆と称している4,26,30)。いずれにせよ,痴呆が大脳の広範な障害の結果として出現することは一般の認めるところである。しかし痴呆症候群には脳損傷を導いた基礎疾患や病巣部位とは関係なく(非特異的),共通する症候を示すと同時に,基礎疾患や病巣部位に関連した,特有の臨床像が存在することも経験的に認め得るところである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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