icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学17巻13号

1975年12月発行

臨時増刊号特集 精神医学における日本的特性

A.精神医療にみられる日本的特性

内観療法に関連して

著者: 村瀬孝雄1

所属機関: 1国立精神衛生研究所

ページ範囲:P.1355 - P.1365

文献概要

Ⅰ.内観とは
 内観療法は日本独自の広義の精神療法の一つとして,近年,医学領域においても着目されてきた方法である。その特徴については,奥村,佐藤,山本14)(1971),あるいは,佐藤16)(1974)の編による成書に詳しい。この方法では,特に1週間の目覚めている時間のほとんどすべてを内観に当てる集中法が重視されている。集中法の骨子は,周囲から最小限,びょうぶで隔離された狭い空間に身を置いて,自分が過去に深いかかわりを持った人々を1人ずつ選び出し,その人に対して自分はどういうことをしてきたかを3つの観点に立って逐一想起するのである。その観点は,「して貰ったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」の3つである。面接者は約2時間おきに内観者のもとを訪れ,その時に調べていることの要約を2〜3分の間聞き,やり方の指導や支持を与えたりあるいは聞き役として援助したりする。
 3〜4日目あたりから,内観者は自分がいかに多くの配慮,愛情を身近かな人々から受けて今日に至ったが,それに対して彼のほうからは何のお返しもしておらず,これまで気付かなかった実に多大の迷惑をそれらの人々にかけていたと実感をもって気付くようになる。感謝,負い目,罪の気持が互いに織りなされるように交々湧いてくるにつれ,彼の自己像,他者像にも著しい変化が生ずる。安らぎ,謙虚,希望,償いへの自発的な願いなどが現れてもくる。心身医学的症状の改善が生ずることも稀ではない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら