二重盲検法によるPenfluridol(Easer®)とPimozideの精神分裂病における比較試験
著者:
稲永和豊
,
有川勝嘉
,
北原尊義
,
山崎達雄
,
柴田道二
,
山口栄一
,
甲斐庸禹
,
井上一三
,
山内育郎
,
野瀬清水
,
渡部嵐
,
井上良治
,
上村弘光
,
小川暢也
ページ範囲:P.287 - P.298
I.はじめに
近年,長時間効果が持続するneurolepticaが開発されて,精神分裂病の治療にも一つの進展がみられている。penfluridol(TLP-607)はJanssen研究所で開発された経口的に用いられる長時間効果が持続するneurolepticaで,図1のような構造式をもつdiphenylbutylpiperidine誘導体である4)。すでに本剤はマウス,ラット,イヌ,モルモットなどを使用した薬理学的実験で強力かつ長期持続性をもつneurolepticaとしての作用が確認され,また毒性試験から安全性が高く,副作用も少ないことが報告されている4)。
臨床的にはヨーロッパで精神病患者に対する臨床予備試験も行われ,その有用性と安全性についてすでにいくつかの報告がみられる1〜3,7)。筆者らは各々の施設において,入院中の精神分裂病患者に対してpenfluridolの効果を予備的に試験し,かなりの効果をあげることができた5,8,14)。それらの研究において本剤の最も効果的な目標症状は,表情の硬さ,冷たさ,感情鈍麻,自発性減退,あるいは接触性障害や不自然さといった精神分裂病の中核症状であり,種々の異常体験などの辺縁症状にも効果を有することが認められた。
そこで今回は二重盲検法を用いてpenfluridolと効果が類似しているといわれ,また効果持続性もあるといわれるpimozideと臨床効果を比較検討してみた。pimozideもまたJanssen研究所において開発され,患者の社会との接触性,周囲への関心,自発性,病識および統制ある精神活動を促進することなどの効果が二重盲検法などで確認されている薬物である6,9〜13)。