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文献詳細

雑誌文献

精神医学17巻3号

1975年03月発行

文献概要

研究と報告

蛙憑きの2症例について—その精神医学的・民俗学的考察

著者: 佐藤親次13 菅野圭樹13 高江洲義英13 宮坂松衛2 小田晋2

所属機関: 1郡山精神病院 2独協医科大学精神科 3東京医科歯科大学神経精神科

ページ範囲:P.243 - P.252

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I.はじめに
 西欧の近世精神医学が,鬼神論的な神学の傾向,とくに憑きもの妄想をもつ精神障害者への迫害に対するC. H. AgrippaやJ. Weierらの批判を通じて,その暁を迎えたことはG. Zilboorgらによって指摘されている。西欧諸国では,悪魔憑きや狼憑きについての記載は医学的・非医学的文献を通じて数多い3,4,7,8,12,28,31,36,42,46,47)。一方,本邦の近代精神医学は,当初西欧の精神医学の移植によって発足したが,本邦における独自の精神症状学的研究の対象になったものは,実は狐憑きの問題であった。わが国への内科系医学の移植者として役割を果たしたBaelzによって始められた狐憑病研究をうけつぎ,疾患の種類とは関係なく,当時の精神病者の病態に狐憑きが高頻度にみられることを報告し「狐憑病新論」というモノグラフにまとめたのは門脇真枝であった14)が,呉秀三も早くからこの現象について報告し,本邦の古典の中での狐に関する記載を丹念に蒐集している18)。その後,森田23),佐藤35),新福37)らによって,本邦における土俗的なもの憑き現象の研究がつづけられ,とくに新福の研究は,山陰地方における土俗的憑きもの現象の問題に社会精神医学的な接近を試みたものである37)。この場合,憑依者となる動物として,主な研究対象となっているのは狐で,榊は,狼憑き(Lykanthropie)にならって狐憑き(Alopekanthropie)という命名を行っている14)が,日本民俗学の側からは憑きものとなる動物としては,狐,犬神,狸などが多く,イイズナ,外道というイタチ,蛇,猿,ネズミなども報告されている10,45)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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