文献詳細
文献概要
研究と報告
いわゆるVerkehrtsehenの臨床—第1報 逆転視について
著者: 兼子直1 小波蔵安勝1 佐藤時治郎1
所属機関: 1弘前大学医学部神経精神医学
ページ範囲:P.253 - P.260
文献購入ページに移動I.はじめに
今世紀の初め,Kolb12)(1907),Pick24)(1908)により,外空間の上下,前後,左右が発作性に逆転して知覚されるいわゆるVerkehrtsehenなる精神現象が初めて報告された。元来,空間内における自己と外空間との関係の認知の中で,上下・前後・左右の認識は,主観的空間認識の最も重要な要素と考えられているが,いわゆるVerkehrtsehenにおいては,自己の身体の前後・左右認知には異常はないものの,外空間の上下,前後,左右が逆転して認知されるのである。
Wilder27)(1928)とHalpern6)(1930)は水平面で前後,左右が逆転して見える現象と上下が逆転して見える現象とを本質的に相違する現象として区別し,大橋18)らも前者を"逆転視",後者を"倒錯視"と呼んで区別している。西浦17)は後者を"発作性空間識喪失"と名づけているが,ここでは大橋にならって"逆転視"という用語を用いることにする。なお,本論文では逆転視について述べ,第2報において倒錯視について報告する予定である。
今世紀の初め,Kolb12)(1907),Pick24)(1908)により,外空間の上下,前後,左右が発作性に逆転して知覚されるいわゆるVerkehrtsehenなる精神現象が初めて報告された。元来,空間内における自己と外空間との関係の認知の中で,上下・前後・左右の認識は,主観的空間認識の最も重要な要素と考えられているが,いわゆるVerkehrtsehenにおいては,自己の身体の前後・左右認知には異常はないものの,外空間の上下,前後,左右が逆転して認知されるのである。
Wilder27)(1928)とHalpern6)(1930)は水平面で前後,左右が逆転して見える現象と上下が逆転して見える現象とを本質的に相違する現象として区別し,大橋18)らも前者を"逆転視",後者を"倒錯視"と呼んで区別している。西浦17)は後者を"発作性空間識喪失"と名づけているが,ここでは大橋にならって"逆転視"という用語を用いることにする。なお,本論文では逆転視について述べ,第2報において倒錯視について報告する予定である。
掲載誌情報