文献詳細
研究と報告
向精神薬療法中の精神神経疾患患者の眼科的所見(2)—向精神薬服用によると思われる水晶体混濁
著者: 小椋力1 久田研二1 赤松哲夫1 大熊輝雄1 瀬戸川朝一2 玉井嗣彦2 松浦啓之2 久葉周作3 土江春隆3 島雄周平4 三原基之4 井上多栄子4
所属機関: 1鳥取大学医学部神経精神医学教室 2鳥取大学医学部眼科学教室 3安来第一病院 4鳥取大学医学部皮膚科学教室
ページ範囲:P.271 - P.281
文献概要
向精神薬の副作用としては従来錐体外路症状,肝機能障害,その他多くのものが知られているが,最近ではとくにtardive dyskinesia,角膜・水晶体の混濁など不可逆性の変化が注目されるようになった。そのうち角膜・水晶体の混濁については,Bock and Swain3)(1963)を初めとしてFeldmanら5)(1964),Greinerら9)(1964),DeLongら4)(1965),Wetterholmら23)(1965),Mathalone15)(1967)などの報告が続き,わが国では山中ら25)(1971),本多ら11)(1973)の研究がある。それらの研究によると,混濁は角膜・水晶体の瞳孔領に一致した最表層にあり,粉状,顆粒状,星状を示すのが特徴とされているが,出現頻度,服用した向精神薬の種類,量などとの関係については一定の知見は得られていない。他方これらの角膜・水晶体の混濁を有する症例には皮膚色素沈着が高率に認められるとの報告があり(Barsaら,1965),この方面から混濁の病態生理を解明する試みも行われているが,有色人種については混濁と皮膚色素沈着との関係を検討した報告はみられない。
筆者らは,すでに第1報(大熊ら17),1975)で報告したように,向精神薬療法中の精神神経疾患患者に服用した向精神薬のためと思われる水晶体の混濁を有する症例を見出したので,これらの症例について混濁と服用した向精神薬との関係を調べたほか,皮膚色素沈着などとの関係についても検討したので,その概要を報告する。
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