文献詳細
来日記念講演
—Medard Boss—現存在分析的現象学に照らした分裂病性のKrank-sein
著者: 木村敏2 宇野昌人3
所属機関: 1Daseinsanalytisches Institut für Psychotherapie und Psvchosomatik, Medard-Boss-Stiftung 2名古屋市立大学医学部神経精神科 3東京都精神医学総合研究所
ページ範囲:P.440 - P.453
文献概要
今われわれが分裂病性のKrank-seinという場合には,われわれはこれを,より現実に近い仕方で呼ぼうとするのであるが,このKrank-seinは数的には世界中であらゆるKrank-seinのうちでも最上位に位置するものである。精神科医にとって分裂病性のKrank-seinは明らかに最も重要なものである。人間的存在の,他のあらゆる現象と同様に,分裂病性Krank-seinにも学問的には2つの異なった道で近づくことができる。その1つは,この病気の成因(Genese),由来(Herkunft)あるいは病因(Aetiologie)を探究するという接近法である。それはさらに2つの異なった方向に分かれる。一方は,分裂病性のKrank-seinは身体的起源をもっており,したがって身体因性の病気であるという前提から出発する。いま1つの方向は心的な原因を仮定し,この病気は心因性のものであると考える。さらに身体因と心因との結合を考える精神科医もいる。もちろん分裂病性のKrank-seinの場合には,今日まで身体因の研究も厳密な批判や追試にたえうるような成果には到達していない。
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