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研究と報告
Phobic Anxiety-Depersonalization Syndrome(Roth)の1例
著者: 渡辺吉彦1 丸子一夫1 熊代永1 松田岱三2 尾野成治3
所属機関: 1福島県立医科大学神経精神医学教室 2国立仙台病院精神科 3福島大学教育学部特殊教育研究室
ページ範囲:P.575 - P.581
文献購入ページに移動1959年,Martin Rothは,恐怖症(phobic anxiety)と離人症(depersonalization)の2つの症状を組み合わせ,従来の神経症類型に該当しない新しい1類型を提唱し,これを,恐怖・離人症候群(phobic anxiety-depersonalization syndrome)と名づけた5〜8)。この症候群は,特徴的性格をもつ主に20代後半の女性に見られ,急激な不幸・驚愕を契機に発症し,恐怖症と離人症の中心症状を示して慢性に経過する症候群である。
本邦において,高橋9)が1967年に紹介しているが,今回,われわれは単に恐怖神経症(phobic anxiety neurosis)とも,離人神経症(depersonalization neurosis)とも名づけ難い症例を経験し,これがRothのいう症候群に相当するものと考え報告する。なお,Rothのいう恐怖症とは,広場恐怖(agoraphobia)を意味するが,本例では日本的特性を考慮にいれて,いわゆる対人恐怖をも含めて広く解釈した。
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