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研究と報告
Carbamazepine(Tegretol)の躁うつ病に対する治療効果ならびに予防効果について
著者: 大熊輝雄1 岸本朗2 井上絹夫3 小椋力4 本池光雄2 松島嘉彦4 中村一貫4 田中潔4 馬嶋一暁4 松下棟治5 松本久6 小倉淳7
所属機関: 1東北大学医学部精神科 2島根県立湖陵病院 3但馬病院 4鳥取大学医学部神経精神科 5山陰労災病院 6米子病院 7倉吉病院
ページ範囲:P.617 - P.630
文献購入ページに移動近年精神疾患に対する薬物療法は長足の進歩をとげ,とくにうつ病の治療においては三環系抗うつ薬のほかに生体アミン前駆物質なども試用され,多くの興味ある結果が報告されている。しかし躁病あるいは循環性躁うつ病(以下MDIと略記する)の治療にあたっては,従来はphenothiazine系薬物,butyrophenone系薬物などによってある程度強制的に鎮静させながら自然寛解を待つほかはなく,躁状態の治療は精神科治療のうちで最も困難なもののひとつとされてきた。
このような意味で,最近出現した炭酸リチウムは,かなり顕著な抗躁作用とある程度の抗うつ作用を有するとともに,躁病相あるいは躁・うつ病相の周期的発現に対して予防効果を有することが明らかにされており(Baastrupら2),1967;Angstら1),1969),躁うつ病に対する新しい治療薬として多くの期待がかけられている。しかしリチウム療法にもいくつかの短所がある。そのひとつはリチウムに反応しない症例が少なくないことであり,中毒量と治療適量との間隔が狭く,過量投与の場合にはかなり重篤な副作用が出現するので,たえず血中濃度を測定しながら治療を行うことが望ましいこと,身体細胞の塩類の平衡に持続的な強い変化を与えるのでその長期使用には問題があると考えられることなどである。
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