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研究と報告
向精神薬服用時の洞性頻脈に対するβ遮断剤Pindolol(Carvisken)の臨床治験—二重盲検法による検討
著者: 和泉貞次12
所属機関: 1新潟大学医学部精神医学教室 2河渡病院
ページ範囲:P.631 - P.642
文献購入ページに移動精神科の分野にphenothiazine系薬物が登場して,治療面で画期的な貢献をなしたことは,万人の認めるところである。その後butyrophenone系薬物をはじめ,新しい系統の向精神薬が開発され,それぞれ独特な持味ゆえに重宝がられている。しかしながら,これら多種多様の向精神薬も,精神分裂病を主とする精神病の真の治療に対しては,きわめて微力であるがゆえに,多量かつ長期にわたって——場合によっては終生——投与されているのが実状である。
ところで,これら向精神薬の服用にさいして洞性頻脈の出現することは,従来から知られてはいたが,ほとんど看過されてきた。しかしながら,近年向精神薬の心臓,血管系への影響についての関心が高まり,前記の洞性頻脈のみならずT波の平低化,S-T降下,これらを伴った洞性頻脈や突然死などが報告されるようになり,心筋自体に何らかの不可逆的な器質性変化さえも生ずるといわれている。これら洞性頻脈と心筋障害は,心不全を生ずる素地ともなるものであり,これらを回避する努力がなされなければならない。しかしながら,すでに述べたごとく向精神薬の長期投与を避けて通れない精神医療の現状にあっては,薬物による洞性頻脈の治療はきわめて大切なことといえよう。
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