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来日記念講演
—Hubert Tellenbach—内因—世界因性精神病としてのメランコリー
著者: 宮本忠雄1 平山正実1
所属機関: 1自治医科大学精神医学教室 2ハイデルベルク大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.672 - P.680
文献購入ページに移動それなら「内因性」については,どうなのか。われわれは,この概念の発展のあとをたどる余裕はないので,ここでは3つの考え方を指摘するだけにとどめたい。まず第1に,内因性とは,フランス(Magnan,Falret,Baillarger)やドイツ(Fauser,Bumke,Gaupp,Tiling,そして―まったく根本的には―Kretschmer)の精神医学にとって,病前にあらかじめ存在していた人格の不調和が尖鋭化したものであり,気質の諸類型が「それぞれの」精神病へと発展することだった。第2に初期の精神分析学,とりわけアーブラハム(Abraham,1916)にとって,内因性といえば,orale Zoneとanale Zoneが「程度に応じて変化し,幼児ではひとりひとり変動するという内因性」と結局は同じものだった。精神分析も「古典期以後」の段階,とりわけクライン(M. Klein)の場合になると,内因性とはなによりも幼児期のとりこみ過程がうまくいったか否かというふうになる。この点についてはあとでさらに言及するだろう。第3に身体論的な精神医学にとって,内因とは「潜在因性の」何か,つまり,まだ知られてはいないが,遺伝的に決定される,脳器質性の疾患過程ということになる。この立場にとっての内因性精神病とは,身体的に「まだ」基礎づけられない精神障害なのである。だから身体論者(Somatiker)は,内因性精神病の発現がまちがいなく病因的状況によって同時にひき起こされるような事実を臨床で再三経験していながら,この病気の原因を脳器質的な過程によるものと固く信じつづけている。
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