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研究と報告
一卵性双生児の一方にみられた神経症性うつ病
著者: 南光進一郎13 井上英二2
所属機関: 1東京大学医学部分院神経科 2東京大学医学部脳研究所 3現:東大病院神経内科
ページ範囲:P.801 - P.806
文献購入ページに移動双生児法による神経症研究の目的は2つある。1つは未だ十分に明らかにされたとは言い難い神経症の病因論的(etiology)研究の手がかりを得ることであり,他の1つは症状発現に至る遺伝—環境系の力動的過程(dynamic process)の追求を幾分なりとも実証的に行うことである。前者の例として本邦では飯田1),井上2)の研究がある。症例研究は後者を目的とするが,とりわけ一卵性双生児における不一致例の検討は,遺伝的には同一と考えられる健康者を対照とすることにより,神経症の発現に至る環境要因の分析をより客観的になし得ると期待される。
しかしながら,他の精神疾患に比し環境要因がとくに大きな意義をもつと考えられる神経症の研究においては,双生児法をもってしてもその分析は容易ではない。1例1例の忍耐強い症例の積み重ねが必要とされる所以である。このような不一致例の報告として,本邦では諏訪ら3),飯田4,5),熊野ら6),辻ら7)の報告があるが未だ十分な数とはいえない。私達は,最近,神経症性うつ病を呈した不一致例を経験したので報告する。
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