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研究と報告
Transient Global Amnesia—Amnestic Episodeの最中に観察された3例について
著者: 岡田文彦1 小山司1 塚本隆三2 伊藤直樹2 水野和子2 原岡陽一2
所属機関: 1北海道大学医学部精神医学教室 2市立旭川病院精神神経科
ページ範囲:P.851 - P.856
文献購入ページに移動1964年にFisherとAdams8)は中高年齢層で急性に発症し,他に神経学的欠陥を伴わない一過性の記憶の形成と保持の障害を特徴とする17症例を詳細に検討し,症候群としてのtransient global amnesia(TGA)の概念を確立した脚注。
本症候群は1回だけのエピソードであることが多く,エピソードの最中にみられる健忘はshort-term memory(数分以上経過しても想起可能な記憶)の障害によるもので,数時間持続し,数日から数週間の逆向健忘を伴っている。この逆向健忘はエピソード終了後短時間のうちに1時間かそれ以下に急速に減少する。エピソードの最中,患者はやや混乱当惑し,同じ質問を何度も繰り返すが,通常の意味での意識の障害は認められず,問いかけには敏速に応答する。immediate memory(数秒から数分位のごく短い記憶)とremote memory(数週〜数年以上前の記憶)が保持されているため,自分の名前や自宅の住所は間違えず,車の運転や料理などの合目的的行為を続けることが可能である。
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