二重盲検法によるTPN-12とThioridazineの精神分裂病に対する薬効比較
著者:
市丸精一
,
工藤義雄
,
奥西孫市
,
広崎康尚
,
高橋幸彦
,
徳永五輪雄
,
藤木明
,
高橋幸也
,
吉田計夫
,
矢ケ崎明美
,
西沼敬次
,
谷野志隆
,
中野志郎
ページ範囲:P.953 - P.966
I.はじめに
1952年,DelayとDenikerらがchlorpromazineの内因性精神病患者に対する臨床報告をして以来,数多くのphenothiazine系の向精神薬が開発され,有効な治療手段となっている。phenothiazine系の薬剤は 1)dimethylamine側鎖を有するもの―chlorpromazine,promethazineなど。2)piperazine側鎖を有するもの―perphenazine,fluphenazine,prochlorperazineなど。3)piperidine側鎖を有するもの―thioridazine,mepazineなどの3群に分類される1)。そして,これら3群の薬剤はその構造式にしたがってそれぞれ共通した作用の特徴をもっている。たとえば,piperidine側鎖をもつ向精神薬は一般に作用が穏和であるとされ,その代表的な薬剤であるthioridazineは効果が穏和で,作用スペクトルが広く,副作用も弱いことから現在も多くの精神科医に繁用されている薬剤の一つである。
今回われわれはこのthioridazineの生体内代謝過程における酸化物で10-〔2-(1-methyl-2-piperidyl) ethyl〕-2-methylsulfonyl phenothiazineの構造式(図1)を有するTPN-12を二重盲検法によりthioridazineと比較した。TPN-12はthioridazineと同じpiperidine側鎖を有し,上記 3)の薬剤に分類されるが,その作用はthioridazineに比較して速効性で作用も強いという。こういった同系の薬剤を比較するには,十分に管理された二重盲検法によることが最適であると考え,pilot試験を行い数回にわたる会議の後,試験を実施して以下の成績を得たのでここに報告する。