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文献詳細

雑誌文献

精神医学17巻9号

1975年09月発行

文献概要

展望

児童の精神分裂病

著者: 黒丸正四郎1

所属機関: 1神戸大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.896 - P.906

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Ⅰ.序文
 13歳(Despert, L. 6)),あるいは14歳(Hart-mann, K. 9),その他)以下の年齢で成人の分裂病と同様の精神症状がみられる時,児童の分裂病(Childhood Schizophrenia)と称している。もちろん,この場合の分裂病症状とはその命名者であるBleuler, E. の定義に従ったものであって,現実との生々しい接触を喪失した自閉的な思考や行動がみられ,それに伴って幻覚,妄想なども出現する精神病状態のことである。
 内因性精神病としての分裂病が児童期にみられるか否かという問題は,既に今世期の初めKraepelin, E. がDementia praecoxを記載して以来,精神医学界の関心事となり,たとえばDe Sanctis, S.(1905)はDementia Praecossimaを,また,Heller, T.(1908)はDementia infantilisを記載した。しかし,周知のごとく,これらの記載はKraepelin, E. の疾病概念に従って痴成ということに重点が置かれたため,今日の分裂病概念とはいささかその範疇が異なっており,同一に論ずることはできない。事実その後これらの症例はその剖見などから脳の器質性の変性所見が報告された。かくのごとくであるから,Bleuler, E. の概念に基づいて児童期の分裂病が記載されたのは1932年Potter, H. 17)が4歳もしくは6歳で発病した16例を報告したのに始まるといってよい。彼はこれらの症例に共通する病状として,(イ)環境からの逃避,(ロ)興味の喪失,(ハ)思考の障害,(ニ)疏通性の欠乏,(ホ)感情の鈍麻,(ヘ)奇矯な行動,の6つを挙げた。その他このように症状を列挙したものとしてBradley, C. 4)(1941)の報告があるが,それによると,(イ)孤立傾向,(ロ)孤立を犯されたときの亢奮,(ハ)白日夢,(ニ)奇矯な行動,(ホ)興味の喪失,(ヘ)退行機制,(ト)神経質の傾向,(チ)運動の不活発さ,の8点が指摘された。症状記載のみでなく,その病態を発病,経過,転帰をも含めて詳細に検討したものとしてはSsucharewa22)(1932)およびGrebeleskaja-Albatz8)(1934)の報告がある。前者は7歳から17歳までの107例,後者は3歳半から8歳までの22例について述べているが,それによると,急激に発病して急性の経過をとる急性型と,徐々に発病して亜急性もしくは慢性の経過をとる型のものとがあり,前者は主として年長児に多く,後者は主に年少児に多いとされており,これは今日の見解からみてもきわめて示唆に富む意見である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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