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研究と報告
強迫者の心理と「縁起かつぎ」の心理
著者: 久保信介1
所属機関: 1川崎医科大学精神医学教室
ページ範囲:P.923 - P.928
文献購入ページに移動Ⅰ.はしがき
本論文は「縁起かつぎ」の心理(常態心理)から強迫神経症者を中心に強迫者の心理を考察することが主題である。強迫現象は,それが軽症の場合は,正常な心理状態と区別し難く,強迫現象としての常態心理と病態心理は移行していることが知られている1,2)。しかし一方,重症になればなるほど,強迫はその人間全体を囚えてしまって,病者の生活には,もはや一切の自由というものが許されないほどになる。その様相は一見,末期状態における分裂病のような感を抱かせる2)。一般的にいうと常態は,病態を通して論じられることが多く,また病態は常態を通して論じられることは少ない。その故に常態と病態が移行する様相が不明瞭になり,また病態がより以上に病的にとらえられる危険性があると思われる。とくに強迫現象はその危険が大きい。以下に述べる常態としての「縁起かつぎ」から強迫現象を考察するとき,その常態と病態の移行する様相,またより重症の一見奇妙とも見える病者の生活態度が,より明瞭な形で理解できるのではないかと思う。
本論文は「縁起かつぎ」の心理(常態心理)から強迫神経症者を中心に強迫者の心理を考察することが主題である。強迫現象は,それが軽症の場合は,正常な心理状態と区別し難く,強迫現象としての常態心理と病態心理は移行していることが知られている1,2)。しかし一方,重症になればなるほど,強迫はその人間全体を囚えてしまって,病者の生活には,もはや一切の自由というものが許されないほどになる。その様相は一見,末期状態における分裂病のような感を抱かせる2)。一般的にいうと常態は,病態を通して論じられることが多く,また病態は常態を通して論じられることは少ない。その故に常態と病態が移行する様相が不明瞭になり,また病態がより以上に病的にとらえられる危険性があると思われる。とくに強迫現象はその危険が大きい。以下に述べる常態としての「縁起かつぎ」から強迫現象を考察するとき,その常態と病態の移行する様相,またより重症の一見奇妙とも見える病者の生活態度が,より明瞭な形で理解できるのではないかと思う。
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