精神医学18巻11号

1976年11月発行

研究と報告

精神分裂病の再発に関する調査

著者： 増野肇¹ 新福尚武¹ 有安孝義² 林信人³ 矢内伸夫⁴⁶ 藍沢鎮雄⁵⁷

所属機関： ¹東京慈恵会医科大学精神神経科教室 ²総武病院 ³栃木県立岡本台病院 ⁴根岸国立病院 ⁵多摩川保養院 ⁶現南小倉病院 ⁷現国立精神衛生研究所

ページ範囲：P.1147 - P.1154

I．はじめに
　薬物療法の進歩は，これまでなすすべもなく精神病院内に沈澱していた分裂病患者の社会復帰を促進するとともに沈澱すべき分裂病患者を減少させることに貢献したが，再発に対しては認むべき効果がなく，むしろ再発防止の困難さを印象づけることになった。内外における分裂病の予後に関する研究を見ても，戦前の調査^1〜3）は主として退院後何年か経過した時点での実態調査に重点をおき，その時点における状態を捉えているもののそのあいだにおける経過，特に再発の有無についてはふれていない。それに対して，戦後の調査^4〜6）はむしろ再発の有無，その発生様式や関係因子の解明に大きな関心を向けているが，そのことにも薬物療法時代における可発問題の重大さが示されていると考えることができる。
　一方，分裂病の発病のメカニズムがいまだはっきりとしない現在，再発のメカニズムの研究を通じてそれに迫る道も示唆される^7）。
　以上の理由から，著者らは分裂病の再発の調査にとりかかることにしたが，調査期間を退院後6年とした。それは，これまでの蜂谷^4），大熊^5）らの調査では退院後の経過観察期間が1〜6年および3〜8年で，かなりの幅があるうえ，平均3年となるが，それでは不十分と考えたからである。