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研究と報告
致死性緊張病の1例について
著者: 岩瀬正次1
所属機関: 1医療法人守山荘病院
ページ範囲:P.1171 - P.1180
文献購入ページに移動I.はじめに
いわゆる致死性緊張病(tödliche Katatonie)とは1934年Stauder1)が初めて記載した疾患名である。彼は,本疾患は若年者に急激に発病し,高熱,緊張病性亢奮,昏迷,時に意識障害を示し,肢端チアノーゼ(Akrozyanose),脈搏微弱,出血性素因を伴い短期間の経過で死亡し,臨床的並びに病理解剖学的検索によるも死因不明であると報告した。このような疾患概念は,歴史的には既に1832年Calmeilによって報告されており2),1929年にはScheidegger3)が43症例報告している。Stauder以後Jahnら4)(1936)も致死性緊張病として報告しているが,別にfebrile zyanotische Episoden(Scheid,19375)),Exhaustion syndrome(Shulack,19466)),Delirium acutum(Lingjaerde,19547)),perniziöse Katatonie(Knoll,19548)),lebensbedrohliche Katatone Psychose(Huber,19549))などの種々な名称の下に諸報告がある。
このように,疾患名が報告者によってかなり異なるのは,本疾患が未だに疾患単位であるのかあるいは症候群であるのか,統一的な見解がなく,病因あるいは本態が全く不明であるためである。臨床的ならびに病理解剖学的な検索によっても,多彩な臨床症状に対応する身体的基盤が不明で,致死的な経過にもかかわらず,脳および一般臓器に器質的病変を欠くことが致死性緊張病の基本的特徴でもあるといえよう。もっとも,臨床経過が致死的であるかどうかに関しては,報告者により若干の差がある。Stauder1),Jahn4)らは致死的(tödlich)と形容したが,以後の研究老は必ずしもこの言葉を疾患名に使っていない。しかし,perniziös(Knoll)8)とかlebensbedrohlich(Huber)9)とされているのは,本疾患過程が致死的でないとしても極めて重篤であることを示している。
いわゆる致死性緊張病(tödliche Katatonie)とは1934年Stauder1)が初めて記載した疾患名である。彼は,本疾患は若年者に急激に発病し,高熱,緊張病性亢奮,昏迷,時に意識障害を示し,肢端チアノーゼ(Akrozyanose),脈搏微弱,出血性素因を伴い短期間の経過で死亡し,臨床的並びに病理解剖学的検索によるも死因不明であると報告した。このような疾患概念は,歴史的には既に1832年Calmeilによって報告されており2),1929年にはScheidegger3)が43症例報告している。Stauder以後Jahnら4)(1936)も致死性緊張病として報告しているが,別にfebrile zyanotische Episoden(Scheid,19375)),Exhaustion syndrome(Shulack,19466)),Delirium acutum(Lingjaerde,19547)),perniziöse Katatonie(Knoll,19548)),lebensbedrohliche Katatone Psychose(Huber,19549))などの種々な名称の下に諸報告がある。
このように,疾患名が報告者によってかなり異なるのは,本疾患が未だに疾患単位であるのかあるいは症候群であるのか,統一的な見解がなく,病因あるいは本態が全く不明であるためである。臨床的ならびに病理解剖学的な検索によっても,多彩な臨床症状に対応する身体的基盤が不明で,致死的な経過にもかかわらず,脳および一般臓器に器質的病変を欠くことが致死性緊張病の基本的特徴でもあるといえよう。もっとも,臨床経過が致死的であるかどうかに関しては,報告者により若干の差がある。Stauder1),Jahn4)らは致死的(tödlich)と形容したが,以後の研究老は必ずしもこの言葉を疾患名に使っていない。しかし,perniziös(Knoll)8)とかlebensbedrohlich(Huber)9)とされているのは,本疾患過程が致死的でないとしても極めて重篤であることを示している。
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