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精神分裂病の成因に関する神経伝達異常仮説をめぐって
著者: 融道男1 渡部修三1 渋谷治男1 金野滋1
所属機関: 1東京医科歯科大学神経精神医学教室
ページ範囲:P.340 - P.369
文献購入ページに移動生物学から社会学にいたる様々な視点から解明の試みがなされるほど,精神分裂病という疾患は多面性をそなえている。本稿では分裂病の病因をめぐる諸仮説のうちから,生化学的,脳代謝的な側面,特に最近その研究の進歩が著しい神経伝達物質(neurotransmitter),あるいは神経伝達(neurotransmission)の知見に基づいて提出されたいくつかの仮説を紹介したい。神経の伝達を司る物質としてはnoradrenalineやdopamineなどのcatecholamine,serotonin,acetylcholine,γ-aminobutyric acid(GABA),glutamic acid,glycine,substance P(DRP)などがその候補としてあげられているが,本論では前3者について述べ,伝達物質の受容体(receptor)としてadenylate cyclasecyclic AMP系に関する知見についても触れる。論拠の多くは動物実験で得られたものであり,これを分裂病の成因論に導入するには慎重でなければならないが,分裂病を生化学的に考える場合,最近では神経伝達の観点なくして論をすすめることは不可能になってきている。伝達物質の基礎的新知見が日々加えられている現状であるが,現時点における展望を試み,それに若干の討論を加えたい。
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