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研究と報告
乱数生成法の臨床的応用—そのてんかんにおける特徴
著者: 黒木建次1 永島正紀1 永井久之1 佐藤誠2 木戸幸聖1
所属機関: 1日本大学医学部精神神経科学教室 2日本大学文理学部心理学科
ページ範囲:P.509 - P.517
文献購入ページに移動数を1,2,3,4,……のように日常呼び慣れた規則的序列で唱えることは簡単であるが3,8,5,7,……のようにデタラメにあげていくことは必ずしも容易ではない。1,2,3,4,……という唱呼が容易なのは,ごくありふれた連語的な系列をそのまま唱えればよいからである。しかし,デタラメな数列を生成(generate)しようとすると,先行する数と規則的序列をつくらない数を次々に探していく走査的な努力を必要とする。この点で,デタラメな数序列の生成過程は,探索的な操作過程とみることができる。この探索的な操作過程は,言語を媒介とする作業の解析でしらべることもできる。例えば,我々6,7)が意味関連のうすいいくつかの単語を使って意味のある文を生成する"構文テスト"を考察して,分裂病者の文の生成過程をしらべてきた場合もこの意図が含まれていた。しかし,より純粋なかたちでこの過程をしらべるには,単語よりは意味論的に制約されることの少ない「数」を用いたほうが目的にかなったものとなるであろう。ここで報告する乱数生成法は,こうした意図のもとに取り上げられた。
デタラメに,できるだけたくさんの数を書き並べる乱数生成法は,村上9,13)によって創案された。村上は,この方法の意義について,"人間の能動的な(あるいは創造的な)情報処理系の特性を調べる手段"と考え,彼の専門分野である人間工学のみでなく,心理学,精神生理学の領域への応用の可能性を示唆している。そしてMatsuda10)は連想語テストを併用した実験から,この方法はGuilford3)のいう展開的思考(divergent thinking)の画をよく描き出しているといい,また村上・高橋・本田らの研究グループ13)は,事故多発者,精神障害者,精神安定剤投与あるいはアルコール飲用時などにこの方法を試み,更に精神発達との関連についても検討している。
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