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雑誌詳細

文献概要

研究と報告

幻覚剤DOM(STP)の臨床的並びに精神生理学的研究

著者: 岡崎祐士1 町山幸輝1 斉藤陽一1 臺弘2

所属機関: 1東京大学医学部精神医学教室 2山田病院

ページ範囲:P.757 - P.770

I.序文
 我々は,1971年にDOM即ち2,5-dimethoxy-4-methylamphethamineの人体への効果を検索する機会を得た。DOMは,STP注1)とも通称され,1967年頃から英国のヒッピーたちによっておもに使用されているといわれている。DOMは図1に示すような構造を有している。同図から推測されるように化学構造上では,幻覚剤メスカリンと覚醒剤アンフェタミンの双方に類似した中間的構造を示している。従ってDOMが,主にメスカリン様作用を示すか,アンフェタミン作用即ち中枢刺激興奮作用を示すかは,その構造との対比で興味あるところである。
 ところでDOMについては,Snyder, S. H. ら1〜3)による人体への効果の報告がある。彼らによると,2mg程度の少量では緩和な多幸感をきたし,5mgを越すと顕著な幻覚作用を示すという。また,本研究に先だって,臺らによりDOM投与によるニホンザルの行動変化の研究4)が行なわれた。その結果では,陶酔状態の指標と考えられる「軽度のねむ気,痛覚減退および刺激に対する反応性の低下ないし周囲に対する無関心」が最も顕著な効果であった。そして幻覚剤LSD,メスカリンと同じく,慢性覚醒剤中毒後遺状態にあるニホンザルに与えても急性に慢性中毒症状を誘発再現することはなかった。アンフェタミンおよびメトアンフニタミンであるならば,このような再現が起こるのである。このように,これまでの研究からは,DOMが幻覚効果をもち,LSD,メスカリンなどと類似の作用をもっていることが推測される。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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