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文献詳細

雑誌文献

精神医学19巻1号

1977年01月発行

文献概要

研究と報告

感性と知性の相補性とその発達障害—精神鑑定の1例,精神薄弱か分裂病か

著者: 清田一民1

所属機関: 1熊本大学医学部精神神経科

ページ範囲:P.33 - P.39

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I.はじめに
 本例は幼女姦の1鑑定例であるが,検察庁は,「精神薄弱」の鑑定結果のもとで起訴し,弁護側は,本人が入院していた精神病院による「精神分裂病」という診断書を提出して争った事例である。精神薄弱と分裂病の境界例については,Kraepelinによる接枝破瓜病の提唱以来,まだ定説がない9)。これが,①精神薄弱と分裂病の合併なのか,②小児分裂病による「見かけ上の精神薄弱状態」の上に,分裂病の症状が顕在化したものか,または,③精神薄弱者の多彩な体験反応13)なのか,④精神薄弱の原因疾患による脳器質精神病または症状精神病なのか,などが問題となる。諸家の報告によると,接枝分裂病,精神薄弱兼分裂病などと診断されている症例の大部分は,精神薄弱の分裂病様状態であるという9,15)
 このことは,精神薄弱の精神症状が複雑多彩なことを物語っているにもかかわらず,従来,精神薄弱の臨床では,知能指数が主に問題にされ,その精神症候学は,知能低下という壁によって説明され,その壁によって行き詰まっていた,今後は知能発達の歪み11),知能構造の不均衡16)などに注意を向けるべきであろう。それは,知能の質的異常(偏倚)を意味し,重度精神薄弱者よりも,中等度ないし軽度の精神薄弱者において,小児期より成人期において,特に社会生活の場で,多くの感覚的経験を積んだ者において,かなり大きく拡大され,その特異な思考様式が,思考の異常およびそれに基づく行動の異常を起こしうると思われる。本例は外因性の精神薄弱と考えられるが,分裂病を疑わせた思考障害を中心として,これらの問題点について若干の考察を行なってみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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