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研究と報告
慢性アルコール中毒患者の血清Creatine Phosphokinase(CPK)異常活性の臨床的意義
著者: 池田久男1 長尾卓夫1 松田清2 尾原安郎2
所属機関: 1岡山大学医学部神経精神医学教室 2河田病院
ページ範囲:P.57 - P.62
文献概要
慢性アルコール中毒患者の血清CPK異常活性をミオパチーの観点から論じた報告は過去にも見ることができる16,26,27)。しかしアルコール中毒における筋の障害は,神経系(中枢性および末梢性)の障害に比べて,臨床的にははるかに頻度の低いものであり11),いまだ数編の症例報告をみるにすぎない7,12,17,28)。他方Bengzon3),Meltzer20〜24)らによって導びかれた精神病急性期における血清CPK異常活性に関する研究により,慢性アルコール中毒でもCPK異常活性が高頻度に認められることが明らかになりつつある5,23,29)。著者らも躁病,非定型精神病,退行期精神病および精神分裂病におけると同様に,慢性アルコール中毒患者の入院時の血清CPK異常値出現頻度が66.713)〜75.9%14)に達することを指摘してきた。
本論文においては,この慢性アルコール中毒患者の血清CPK異常活性が入院前後における患者の精神症状,特に精神病状態の発現の有無と密接な相関を示すことを報告し,血清トランスアミナーゼ活性の変動とCPK値との関係や,慢性アルコール中毒患者の血清CPK異常活性の発現機序について若干の考察を試みたい。
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