古典紹介
—Ugo Cerletti—L'Elettroshock—第1回
著者:
村田忠良1
遠藤正臣2
所属機関:
1札幌天使病院神経科
2金沢大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.69 - P.77
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電撃の歴史は極めて単純である原注1)。他の神経科医と同様に私はいつもてんかんの研究を前景にすえてきた。というのはてんかんは神経学,精神医学の分野で多くの項目に関与しているからである。とかくするうち,1931-1932年に私は,この病気でよく知られているアンモン角の硬化性損傷の意義について研究し始めた。解剖学者としてMilano精神病院にいた6年の間に,てんかん患者にみられるその変化の真の重要さを―頻度と重篤さの点で―私は確信することができた。Spielmeyerはアンモン角の非常にはっきりした区域にこの変化の局在することをより明確にした。つまりSommer野である。研究者の間でこの特殊な変化の病因についての議論が白熱化した。それは局所性循環障害に責を帰すべき(Spielmeyerと他の多くの人たち)ものか,それともある種の《傾病性》すなわちこの区域の本来の選択的な脆弱性(Vogt)に因るのか。しかし,わけてもこの硬化性変化は,そこからてんかんが惹起される《場》を形成する脳損傷なのか,逆に長年にわたる個体への連続的なてんかん発作の単なる結果として考えられるべきなのか。
私はこの問題に動物実験で立ち向かおうと企てた。すなわち動物で繰り返してんかん発作を短時間ないし長時間にわたり誘発し,そのあと組織病理学的観点からアンモン角を調べようと目論んだ。もちろん,てんかん発作の誘発には,そのことだけで脳を傷つけるかもしれないような,一切の外科的手術をできるだけ避けることが必要なので,私は脳を露出して直接刺激する方法を遠ざけ,また有害なけいれん剤の使用も避けた。そのかわり,2〜3の生理学者が特にイヌで採用した方法を用いることにした。彼らはイヌそれ自体に通電することでてんかん発作を起こさせていたのである。