文献詳細
研究と報告
文献概要
Ⅰ.はじめに
近年において強迫疾患と分裂病との関係が新たな眼で見直されているようであるが,分裂病とヒステリーの関係については今日ほとんど研究のなされていない問題圏に属しているといえよう。しかしこの問題は前世紀末より今世紀初頭にかけて熱心に討議されていた(とりわけ独,仏において)のであり,今日においてもわれわれは日常の臨床においてヒステリー状態を呈した人が,一過性に,あるいは長い経過を経るうちに完全に分裂病の状態となったり,分裂病状態を呈する人がヒステリー状態を示したりする場合にしばしば遭遇する。1954年Ziegler, F. J. ら40)は,ヒステリーと診断された66名の婦人のうち12名が20年後の診察において分裂病と診断された事実を報告し,また1962年Astrup, C. ら5)は130例の精神病者中49例にヒステリー徴候を見出しており,「この問題が今日何故に等閑に付されているのか理解に苦しむ」とStork, J. 35)も述べるように,われわれは今日いまいちどこのような臨床的事実を謙虚にみつめなおし,そこに内包されている問題を考えてみる必要があるように思える。
近年において強迫疾患と分裂病との関係が新たな眼で見直されているようであるが,分裂病とヒステリーの関係については今日ほとんど研究のなされていない問題圏に属しているといえよう。しかしこの問題は前世紀末より今世紀初頭にかけて熱心に討議されていた(とりわけ独,仏において)のであり,今日においてもわれわれは日常の臨床においてヒステリー状態を呈した人が,一過性に,あるいは長い経過を経るうちに完全に分裂病の状態となったり,分裂病状態を呈する人がヒステリー状態を示したりする場合にしばしば遭遇する。1954年Ziegler, F. J. ら40)は,ヒステリーと診断された66名の婦人のうち12名が20年後の診察において分裂病と診断された事実を報告し,また1962年Astrup, C. ら5)は130例の精神病者中49例にヒステリー徴候を見出しており,「この問題が今日何故に等閑に付されているのか理解に苦しむ」とStork, J. 35)も述べるように,われわれは今日いまいちどこのような臨床的事実を謙虚にみつめなおし,そこに内包されている問題を考えてみる必要があるように思える。
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