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シンポジウム こころとからだ—東京都精神医学総合研究所,第4回シンポジウムから
行動科学からみたこころとからだ
著者: 中尾弘之1
所属機関: 1九州大学医学部精神神経科
ページ範囲:P.1133 - P.1139
文献購入ページに移動一つの宗教観であるアニミズムでは,人間以外の動物はもちろん,植物や無生物にも,人間と同じ霊魂があると信じられているが,それほどではなくても,動物の行動の中に人間と類似のものを見出し,そこに人間の心と同じものの存在を動物に想定するのは,日常,ごく普通にみられる考えである。もちろんこのような擬人主義に反対の立場もあり,こころという言葉を動物には用いない人もいる。もとより,人間のこころと同じもののすべてが動物にあるものではないが,しかし人間において,こころといわれているものの一部は,動物にもみられるのであり,情動,記憶,学習,葛藤などの言葉は,人間と動物を区別することなく,用いられている。また,動物習性学によると,人間相互の間における非言語的交流と同じ型のものが,霊長類や哺乳類にみられるというのならまだしも,鳥や魚にもみられるといわれ,しかも,鳥の行動観察から得られた知識を人間の行動修正に役立てようとする試みさえある。
このように,こころといわれるもののなかには,人間と動物と共通に考えられるものがあり,私は,このようなこころに関与する視床下部の機能を,ネコを用いて研究しているものである。さらに私は,精神現象を脳の構造を基にして理解したいと考えているものである。このような立場から,「こころとからだ」について私の考えを述べるが,私の考えといっても,それは過去の多くの考えの延長線が交錯して成り立っているのであって,したがって,そのような考えの跡を辿りながら,話を進めてみたいと思う。
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