文献詳細
特集 青年期の精神病理
文献概要
Ⅰ.まえがき
少年非行,中でも思春期非行の問題は,時代や社会体制の如何を問わず,その社会にとって重大関心事の一つであった。それゆえに,この問題はあらゆる関連領域で広く深く研究され,精神医学の分野でも,非行の原因3,14,17,18,28)や治療1,2,15,16,20,23,24,26)の問題は,さまざまな方法によって専門的に研究され,幾多の学問的業績19,22,27)が挙げられてきたことは周知の通りである。
ところで,この論文は,非行についての包括的な体系を総説するのではなく,精神療法的症例研究を通じて個別的・経験的事実の報告を目的としたものである。その理由は以下に述べるごとくである。今日の精神科臨床において,非行問題の相談や診察の依頼がなされ,面接の結果精神障害の関与が見出され,精神科的治療が必要と判断される場合は少なくない。その際,多くの精神科医は,日常の臨床とは異なった戸惑いを感ずるのではなかろうか。彼等非行者の敵意はきわめて露骨であり,行動化を起こしやすく,治療関係は容易に成立しないからである。このような場面において,実際の臨床の手引きとなりうる文献は,意外に数が少ない。著者にとって有益と思われた文献は,Aichhorn, A. 1),Allen, F. H. 2),Robin, G. 24)などであった。いずれの著書も,それぞれの哲学や方法は異なるにせよ,優れた直観と豊かな経験をこめて,実際の症例との治療的関わりを生き生きと記述することに主眼をおき,包括的な体系化を目指さない点が共通している。
少年非行,中でも思春期非行の問題は,時代や社会体制の如何を問わず,その社会にとって重大関心事の一つであった。それゆえに,この問題はあらゆる関連領域で広く深く研究され,精神医学の分野でも,非行の原因3,14,17,18,28)や治療1,2,15,16,20,23,24,26)の問題は,さまざまな方法によって専門的に研究され,幾多の学問的業績19,22,27)が挙げられてきたことは周知の通りである。
ところで,この論文は,非行についての包括的な体系を総説するのではなく,精神療法的症例研究を通じて個別的・経験的事実の報告を目的としたものである。その理由は以下に述べるごとくである。今日の精神科臨床において,非行問題の相談や診察の依頼がなされ,面接の結果精神障害の関与が見出され,精神科的治療が必要と判断される場合は少なくない。その際,多くの精神科医は,日常の臨床とは異なった戸惑いを感ずるのではなかろうか。彼等非行者の敵意はきわめて露骨であり,行動化を起こしやすく,治療関係は容易に成立しないからである。このような場面において,実際の臨床の手引きとなりうる文献は,意外に数が少ない。著者にとって有益と思われた文献は,Aichhorn, A. 1),Allen, F. H. 2),Robin, G. 24)などであった。いずれの著書も,それぞれの哲学や方法は異なるにせよ,優れた直観と豊かな経験をこめて,実際の症例との治療的関わりを生き生きと記述することに主眼をおき,包括的な体系化を目指さない点が共通している。
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