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雑誌目次

論文

精神医学19巻4号

1977年04月発行

雑誌目次

特集 精神分裂病の精神生理学 巻頭言

特集にあたって

著者: 大熊輝雄

ページ範囲:P.314 - P.315

 精神分裂病の研究は,身体主義的な考え方と心理主義的な考え方のあいだを振子のように揺れ動きながら発展してきたといわれる。しかし現在では,生物学的,心理学的,社会学的,人間学的など種々の立場からの研究をそれぞれ認めながら,分裂病を多元的,総合的に把握しようとする柔軟な考え方が一般に行なわれているように思われる。
 従来は,精神分裂病の基本障害あるいは一次性障害は思考障害であるとする考えが一般的であったが,最近では注意,認知機能,もしくは初期の情報処理機能など,思考作用の前提をなす基本的な機能の障害を,分裂病の基本障害とする考え方もかなり行なわれるようになっている。もしこのような注意,認知,情報処理などの障害が分裂病の背景にあるとすると,この種の機能は精神機能といっても生物学的方法ないし生理学的方法によっても接近できる可能性がある領域であるから,分裂病の生物学的研究にひとつのよりどころを与えるであろう。

展望

精神分裂病の精神生理学

著者: 島薗安雄 ,   安藤克巳

ページ範囲:P.316 - P.337

I.はじめに
 精神分裂病の発病,病態,経過の変化などに関する身体,生物学的研究は,これまで非常に多く行なわれているが,未だに本態を明らかにするところまでには至っていない。
 ここでは,まずこの方面の研究の基本的な問題点について触れ,そのあとで個々の精神生理学的研究成果の幾つかを紹介し,最近の流れについて眺めてみたい。

精神分裂病と体温の日内リズム

著者: 諸治隆嗣 ,   高橋恵子

ページ範囲:P.339 - P.348

I.はじめに
 分裂病患者で自律神経機能ときわめて密接に関連するさまざまな生体機能の変調の存在することが早くから指摘されていた。体温に関しても,分裂病者の手足が一般に冷たく,ジトジトしていて,平均体温が低く,皮膚温の寒冷や温熱に対する異常反応が認められるといった報告があり6,7,10〜12,15),体温調節機構に何らかの機能不全の存在することが推測されてきた。しかし,「分裂病の生物学的研究」に共通して認められていることであるが,分裂病者の体温に関する研究でも,必ずしも一致した所見は得られていない。それは,研究者の間に存在する分裂病の疾患概念の相異や臨床診断のむずかしさから,生物学的研究で常に要請される研究対象の均一性を求めることの困難さによることがまず第一にあげられる。また,情動による変化,栄養条件,衛生状況,身体的治療などの分裂病の病的過程とは切り離して考えることのできない2次的要因,さらに皮膚温を含めて体温の研究に際して問題となる生体を取りまく環境の温度や湿度などを一定に保つことが困難であったことに起因しているともいえる。
 ところで,生体の生理的機能がほぼ24時間を周期とした日内変動を示すことは早くから知られていた。ヒトの体温もまた朝方最も低く,午前7時頃から急激に上昇し,午後5時頃に最高値に達し,その後徐々に下降する明瞭な日内変動を示すことが,すでに1845年Davyによって詳細に報告されている8)。当初,この変動は外部の寒冷や温熱,運動や休息などに起因するものと考えられていたが,多くの研究者による膨大な観察の結果,生体の生理的機能が示す日内リズムのうちでも,外部環境による影響をとりわけ受け難い,最も安定した「内因性」の日内リズムの一つであることが明らかにされてきた。さらに,このリズムの発現が前視床下部に存在する体温調節機構(thermoregulatory centers)と密接に関連していることが想定されている1)。また,その本態はいまだ明らかにされていないが,脳内化学伝達物質(neurotransmitters)ことに,noradrenalinやserotoninの活性アミンの代謝の体温調節に対する関与を示唆する報告14),あるいは前視床下部の活性アミン濃度の日内リズムと体温のリズムとの関連性を推測する研究者も現れている13,26)

精神分裂病者の瞳孔反応

著者: 生島正弘 ,   中尾弘之

ページ範囲:P.349 - P.356

I.はじめに
 精神分裂病者の瞳孔反応に関する研究の歴史は古いが,その多くは定性的なものであり,定量的なものは少なかった。定性的に,また定量的に本格的な研究がなされるようになったのは最近のことである。これらの研究で最も良く知られている瞳孔異常の一つは,緊張型の精神分裂病者に見いだされる"一過性の強直性瞳孔障害(Westphal)"18)である。最近Rubin11)は,精神分裂病者の光刺激や寒冷刺激に対する瞳孔反応が,正常者のそれと著しく異なったものであること,そして,それは交感神経と副交感神経相互作用の機能障害によって生じたものであろうということを報告した。その後Hakerem2)やLidsky7)らも,精神分裂病者群の対光反応は,正常者群のそれと比較して著しく小さく,そのことによって80%以上の確率で,精神分裂病者を正常者と区別することができたと報告している。ところで従来の種々の自律神経機能検査に比べ,電子走査型赤外線瞳孔計による自律神経機能検査には,被検者に無接触で,かつ短時間に,簡単に,動的な変化を記録できる長所があるので,著者らは,電子走査型赤外線瞳孔計を用いて以下のような研究を行なった。

精神分裂病者の視覚誘発電位と臨床像

著者: 門林岩雄 ,   加藤伸勝

ページ範囲:P.357 - P.367

I.はじめに
 精神分裂病は精神疾患の中で最も頻度の多い重要な疾患であるにもかかわらず,その診断は主に臨床症状に拠っており,それがために境界は鮮明ではない。また精神分裂病が単一疾患であるのか,あるいは複数の疾患群であるのかという問題も繰り返し論議されてきて,近年は後者を支持する学者が多くなってきているが9,24,25),いまだ定説となり得ていない。これらのことは精神分裂病を研究するにあたって大きな障害となっていることは否めず,客観的診断法,客観的分類法の確立のまたれる所以である。
 われわれは,精神分裂病患者の視覚誘発電位が15分間の加算作業後振幅減少することを認め13〜16),そのような変化のみられない正常者13,14),神経症患者14〜16),躁うつ病患者19),非定型(内因性)精神病患者20)と鮮やかな対比をなすことをみた。さらに,いったん減少した精神分裂病患者の視覚誘発電位の振幅が時間経過とともに回復していくが,その回復過程に4つの型のあることを認めた16)。本論文ではそれら4つの型の臨床像を克明にしらべ,これからの研究の1つの足がかりとしようとするものである。

精神分裂病における視覚,特にパターン刺激に対する脳波反応

著者: 相田誠一 ,   武内広盛 ,   澤政一

ページ範囲:P.369 - P.376

I.はじめに
 精神分裂病における,精神生理学的アプローチの方法としては,安静時脳波,閃光刺激時の脳波反応,いわゆる誘発電位の解析や検出による種々の試みが,従来多くなされてきている3,5)
 これらの研究を通じて,分裂病の病態生理学的特徴が,分裂病者の臨床症状,あるいは心理学的特徴と関連づけて考えられてきた。このうち,分裂病の心理学的特徴については,種々の議論があるが,分裂病者にみられる認知の歪み,あるいは知覚障害などが,分裂病の基本的特徴とまでいかなくとも,かなり重要な特徴とみなし,このような認知,知覚の障害から分裂病の諸特徴を演繹的に説明しようという試みもある2,6)
 われわれは,このような知覚あるいは,認知などの心理学的側面と脳波反応のような生理学的側面との関連性を考慮に入れつつ,特定の図形刺激による,脳波反応が,正常者や失認を伴う失語症患者の両者における反応態度の差異について調べた1)
 今回は,分裂病者にも同様の方法を適用し,特に図形認知に伴う誘発電位に見られるような反応態度に,何らかの特徴的所見が見られるか否かを検索してみた。

精神分裂病者の「PAGパターン分析計測法」による類型化について

著者: 佐藤時治郎 ,   佐藤厚史 ,   斉藤文男 ,   立山興

ページ範囲:P.377 - P.386

I.はじめに
 1943年,AdrianとMathews1)は人間の光駆動反応(photic driving response)を発見し,報告した。この光駆動反応は周期的な閃光刺激に同期して主として人間の後頭部脳波に重畳して出現する誘発電位であり,閃光の種類によって周波数が変化するため,Kiloh, Osselton9)によってphotic recruitmentとも呼ばれた現象である。本現象は閃光による誘発律動要素と自発律動要素との混合からなる複雑な脳波活動であり,個体的特異性を有すると同時に生理的諸因子の変化によって左右される一面を持ち,特に情動の影響を受けやすい点がWalter21,24)によって注目されている。
 本現象を精神障害者の脳波分析に応用することを最初に着想したのはWalter22,24)であるが,わが国でも五十嵐5),佐藤13〜17),稲永8),一条6,7)らの研究が報告されている。
 著者の1人である佐藤(時)は1963年以降,band pass filter方式によるWalter型21,2)の周波数分析器を用い,低頻度から高頻度まで閃光刺激の周波数を継時的に変化させ,その時の脳波成分の変化を帯域別にまとめて整理し,そのパターンから脳波分析を行なう方法を案出し,これをphoto-analysogram(PAG)と名づけた。
 これまで,佐藤13〜18,11,25)およびその協力者達は非定型内因性精神病から始め,分裂病,躁うつ病,健常者,神経症,てんかん,心身症などについてPAG patternを記録し,これを分類整理してpatternの類型化を行なってきた。
 しかし,従来の判定方法はpatternの類型を判別する場合,すべて視覚的な方法に頼っており,判定者により主観的要素が入りやすい欠点を有し,時としては分類不能のpatternが出ることもあった。この問題を極力回避するため,今回,われわれはpattern判定を一定の手順により計量化し,より客観的な類型判別を目ざしたが,その最初の試みとして以下の研究を行なった。

精神分裂病者とその家族の視覚性認知過程—注視点記録装置による分析

著者: 守屋裕文 ,   安藤克巳 ,   豊田堯 ,   島薗安雄

ページ範囲:P.387 - P.397

Ⅰ.まえがき
 多くの慢性分裂病患者に接していると,その生活態度,行動パターンに共通性があることに気づく。浜田9)によれば,古い分裂病患者に「かくれんぼう」をさせると,鬼からまる見えのところにかくれたり,何時もきまって同じところにかくれたりする。鬼は鬼で,まる見えの人に気づかず,他所を探したり,一度ねらいをつけた人だけをいつまでも追いかけるということである。このように患者は周囲の空間をまるで見ていないような動きをしたり,一定の対象物に固着しているような態度をとる。このような行動をみていると,患者が周囲の空間をどう認知しているのかを科学的に解析することが慢性分裂病患者の特異な行動パターンを理解する上で重要なことのように思われる。
 分裂病患者の家族についての研究はこれまで数多く報告されているが,最近,Reiss19)はこれまでの家族研究を再検討して,それらがなお心因論的研究にとどまっていること,これと生物学的研究成果の結びつきが必要であることを指摘している。そして,子どもの注意と知覚能力の発達は,家族生活におけるコミュニケーション過程によって影響されるが,また遺伝的に規定される点も大きいことから両者の結びつきの可能性を論じている。

精神分裂病患者および家族における奥行き認知

著者: 町山幸輝 ,   谷本るり子 ,   大森道雄

ページ範囲:P.399 - P.407

I.はじめに
 精神分裂病患者が視覚刺激の知覚と認知の過程に障害を有することは多くの研究によってしめされている1〜3,7〜11)。われわれも奥行き知覚テストにおいて患者が正常対照者に比し著しく不正確な判断をおこなうことをみいだし,報告した6)
 認知障害の解析のためにはテスト条件はできるだけ単純であることがのぞましい。われわれのおこなったテストはきわめて単純で,のぞき窓からのぞかれる3本の鉄棒の遠近的位置関係の判断をもとめるものである。3本の鉄棒のうち両端の2木(標準刺激)は被験者から等距離に固定されており,真中の鉄棒(比較刺激)の位置は種々に変化させられる。
 調整法的および極限法的テスト条件のいずれにおいても患者の奥行き認知は正常対照者より不正確であるが,認知の欠陥に関してえられる情報は極限法の場合にはるかに多い。患者の認知の不正確さは第一にはランダムな誤りによって,第二にはわれわれが過恒常と名づけた誤りによって特徴づけられる。このような認知の障害は日常的に習熟している両眼視の条件においてよりも非日常的な不慣れな単眼視の場合に際だって露呈される。奥行き判断の手がかりについての被検者の報告の分析から,われわれは患者の判断の誤りは客観的,合理的な手がかりを選択し,利用することの拙劣さによるのであろうと推測した。
 当初われわれは以上のような知覚および認知の障害が分裂病に特徴的であろうとかんがえたが,その後このような考えは正しくないことが明らかとなった。奥行き知覚テストをより広汎な《正常者》に施行すると,分裂病者とほとんど同等の障害をしめす人々がかなり存在することがみいだされたからである。このような人々は分裂質者であろうとかんがえられる。
 一般的に,分裂病者がしめす異常には分裂病の発病によって規定されるものと逆に分裂病の発病を規定するものとが存在する4,5)。後者の異常は患者が発病前からもっている,おそらく分裂病の素因によって直接的に規定され,発病の必要条件のひとつになるとかんがえられるものである。奥行き認知の不正確さはこのような分裂病の素因にもとづく欠陥,すなわち分裂質を反映するものであろう。1例ではあるが,奥行き認知が著しく不良であった若い女性の発病が確認されている。
 ところで,分裂質者あるいは分裂病の素因を有する者を臨床的に診断することはなかなか困難である。この問題には分裂病の診断以上に議論が多い。しかし分裂病者の家族,両親および同胞,を分裂質者の代表とみなすことにはあまり異論はないであろう。このような考えからわれわれは患者の家族の奥行き認知をしらべることにしたのである。
 分裂病者の家族についての研究はこれまで主として家族内力動の理解のためという見地からおこなわれてきたようにおもわれる。しかしそれは,上述のように,分裂質自体の理解,さらには分裂病の構造的理解という点においても重要な意味をもっている。

精神病者におけるゲシュタルト認知について

著者: 黒丸正四郎 ,   島田照三 ,   菊川豪 ,   大西守 ,   小野俊之

ページ範囲:P.409 - P.415

Ⅰ.緒論
 主体と環境世界とのかかわり方に関する問題は,精神医学における永遠のテーマである。そのかかわり方,適応のあり方を研究する一つの方法として,「視線の動き」が問題となる。何故ならば,これは人間存在の意識性と人格性の両側面を表現するものであるからである。日常生活においてわれわれは,意識的にせよ無意識的にせよ,視線を動かしながら周囲を眺め,凝視し,時には逆に周囲の対象から目をそらすことによって,その置かれている環境世界と密接にかかわりをもつ。視線--何を見るかということ——は主体と環境とを結びつける媒体であり,視線を通して内界と外界は触れ合う。Ponty, M. は「まなざし」に関するあの有名な論文の中でこう述べている。「私が物に追いつき,到達するためには,それを見るだけで十分なのだ。……だからこそ,私は自分の身体を見えるものの中で自由に動かすことができるのだ。……見えるのは,まなざしを向けているものだけなのだ。」「見る者はただそのまなざしによって物に近づき,世界に身を開くのである。そして一方この世界も,見る者がその部分をなしているものであるから,決して即自的なものとか物質とかではない。」「物のただ中にあるからこそ,或る見えるものが見ることを始め,自分にとって見えるものとなる。しかもあらゆる物を見るその視覚によって,見られうるものとなるのであり,また,物のただ中にあるからこそ,感じるものと感じられるものとの不可分な関係が生き続けるのである。」「それらは外なるものの内在であり,内なるものの外在なのだ。」と。これと同じ立場はvon Uexküll J. の“Umwelt”,Buytendijk F. の“Situiert-Sein”,von Weizsacker V. の“Koärenz”などの概念にも示されている。
 かかる主体と環境世界との統合性が前提となってはじめて,視覚の生理機能の現実が保証され,主体にとって意味ある秩序となる。

精神分裂病におけるL-DopaとThyrotropin-Releasing Hormoneの作用

著者: 稲永和豊

ページ範囲:P.417 - P.423

I.はじめに
 1952年にchlorpromazineが精神科の治療に用いられるようになってから,精神科における化学療法時代が開けたが,精神病の治療に用いられるようになった薬の中で,その薬の予測された用途とちがった予期しない用途が見出されたものがいくつかある。まず抗うつ剤の代表であるiminodibenzyl誘導体imipramineがある。Imipramineが抗うつ剤として効果があることが発見されるまでには10年の歳月を必要としたのである。Imipramineははじめ精神分裂病の治療薬,抗ヒスタミン剤,パーキンソン治療剤として試みられたが,それほど著しい効果はなかったのである。スイスのRoland Kuhnがそれまで向精神薬の真空地帯といわれていたうつ病に使って,著効を発見し,それをきっかけとして三環系抗うつ剤が次々と開発されることになった。現在はその副作用からほとんど使用されていない抗うつ剤MAO阻害剤も,本来は結核の治療に用いられていたし,抗うつ効果が発見されるにいたったのは1957年のことである。著者はパーキンソン症候群の治療薬として開発されたL-Dopaと,視床下部ホルモンthyrotropin-releasing hormoneを精神分裂病患者に使用し,従来考えられていなかった治療的効果を見出したので,その研究の成果について述べ,その作用機序について若干の考察を加えてみたい。

精神分裂病の神経生理学的背景—薬物にたいする感受性の特性から

著者: 大熊輝雄 ,   古賀五之 ,   川原隆造

ページ範囲:P.425 - P.433

I.はじめに
 Chlorpromazineが精神分裂病の治療に使用されて以来(Delay, J.,1952),各種の向精神薬が開発され,分裂病にたいする薬物療法は著しく進歩した。またうつ病にたいしてもimipramineの登場以来(Kuhn, R.,1957)三環系抗うつ薬を中心に各種の抗うつ薬が開発されている。このように内因精神病にたいする薬物療法が広く行なわれるようになってから,内因精神病者と正常者とではこれらの薬物にたいする反応がかなり異なることが経験的に知られるようになった。
 すなわち,それぞれの薬物の主作用はさておき,副作用ないし随伴作用とされる眠気,倦怠感,ふらつきその他の自律神経系症状の出現率は,内因精神病者では正常者にくらべて著しく低い場合が多いのである。このように,分裂病者や躁うつ病者がこれらの薬物にたいして正常者よりも強い抵抗力,あるいは低い感受性sensitivityを示すことは,向精神薬療法の実地にとって重要であるだけでなく,分裂病や躁うつ病の病態生理を研究するうえでひとつのいとぐちを与える重要な事実であると考えられる。しかし,従来はこのように重要な事実についての客観的,量的な観察や,その発現機序についての研究はほとんど行なわれていなかった。
 筆者らはこの点に着目し,躁うつ病者のimipramineにたいする感受性(大熊・小椋,1973;内田,1969),分裂病者のchlorpromazineにたいする感受性(古賀,1974;Okuma et al.,1976),各種精神神経疾患者のdiphenhydramine(Benadryl)にたいする感受性(Okuma et al.,1973;川原,1972)などを,脳波を中心とするポリグラフィによって客観的に観察することを試み,脳波や皮膚電位反応などを指標にすることにより薬物にたいする感受性を客観的・量的に表現できることを明らかにしてきた。
 そこで本稿では,分裂病者のchlorpromazineにたいする感受性の研究を中心にとりあげ,内因精神病の病態生理にふれながら考察を行なうことにする。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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