icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学19巻4号

1977年04月発行

文献概要

特集 精神分裂病の精神生理学

精神分裂病におけるL-DopaとThyrotropin-Releasing Hormoneの作用

著者: 稲永和豊1

所属機関: 1久留米大学医学部精神神経科学教室

ページ範囲:P.417 - P.423

文献購入ページに移動
I.はじめに
 1952年にchlorpromazineが精神科の治療に用いられるようになってから,精神科における化学療法時代が開けたが,精神病の治療に用いられるようになった薬の中で,その薬の予測された用途とちがった予期しない用途が見出されたものがいくつかある。まず抗うつ剤の代表であるiminodibenzyl誘導体imipramineがある。Imipramineが抗うつ剤として効果があることが発見されるまでには10年の歳月を必要としたのである。Imipramineははじめ精神分裂病の治療薬,抗ヒスタミン剤,パーキンソン治療剤として試みられたが,それほど著しい効果はなかったのである。スイスのRoland Kuhnがそれまで向精神薬の真空地帯といわれていたうつ病に使って,著効を発見し,それをきっかけとして三環系抗うつ剤が次々と開発されることになった。現在はその副作用からほとんど使用されていない抗うつ剤MAO阻害剤も,本来は結核の治療に用いられていたし,抗うつ効果が発見されるにいたったのは1957年のことである。著者はパーキンソン症候群の治療薬として開発されたL-Dopaと,視床下部ホルモンthyrotropin-releasing hormoneを精神分裂病患者に使用し,従来考えられていなかった治療的効果を見出したので,その研究の成果について述べ,その作用機序について若干の考察を加えてみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?