icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学19巻4号

1977年04月発行

特集 精神分裂病の精神生理学

精神分裂病の神経生理学的背景—薬物にたいする感受性の特性から

著者: 大熊輝雄1 古賀五之2 川原隆造2

所属機関: 1東北大学医学部精神医学教室 2鳥取大学医学部神経精神医学教室

ページ範囲:P.425 - P.433

文献概要

I.はじめに
 Chlorpromazineが精神分裂病の治療に使用されて以来(Delay, J.,1952),各種の向精神薬が開発され,分裂病にたいする薬物療法は著しく進歩した。またうつ病にたいしてもimipramineの登場以来(Kuhn, R.,1957)三環系抗うつ薬を中心に各種の抗うつ薬が開発されている。このように内因精神病にたいする薬物療法が広く行なわれるようになってから,内因精神病者と正常者とではこれらの薬物にたいする反応がかなり異なることが経験的に知られるようになった。
 すなわち,それぞれの薬物の主作用はさておき,副作用ないし随伴作用とされる眠気,倦怠感,ふらつきその他の自律神経系症状の出現率は,内因精神病者では正常者にくらべて著しく低い場合が多いのである。このように,分裂病者や躁うつ病者がこれらの薬物にたいして正常者よりも強い抵抗力,あるいは低い感受性sensitivityを示すことは,向精神薬療法の実地にとって重要であるだけでなく,分裂病や躁うつ病の病態生理を研究するうえでひとつのいとぐちを与える重要な事実であると考えられる。しかし,従来はこのように重要な事実についての客観的,量的な観察や,その発現機序についての研究はほとんど行なわれていなかった。
 筆者らはこの点に着目し,躁うつ病者のimipramineにたいする感受性(大熊・小椋,1973;内田,1969),分裂病者のchlorpromazineにたいする感受性(古賀,1974;Okuma et al.,1976),各種精神神経疾患者のdiphenhydramine(Benadryl)にたいする感受性(Okuma et al.,1973;川原,1972)などを,脳波を中心とするポリグラフィによって客観的に観察することを試み,脳波や皮膚電位反応などを指標にすることにより薬物にたいする感受性を客観的・量的に表現できることを明らかにしてきた。
 そこで本稿では,分裂病者のchlorpromazineにたいする感受性の研究を中心にとりあげ,内因精神病の病態生理にふれながら考察を行なうことにする。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら