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児童虐待の問題について—精神衛生と福祉の立場から
著者: 池田由子1
所属機関: 1国立精神衛生研究所児童精神衛生部
ページ範囲:P.900 - P.916
文献購入ページに移動Ⅰ.まえがき
子殺し,子捨ての社会病理として,親子心中,嬰児殺,児童虐待,遺棄などが,近年にわかに世人の関心を集めるようになった。このうち,親子心中はわが国に特徴的なものと考えられよう。これらの諸現象を一括して論ずるのは,社会評論としてはともかく,精神衛生の立場からは無理だと思われるので,ここでは,いかなる文化,社会にも,また,いかなる時代にも存在した児童虐待について,現在までの医学的研究の結果を基礎にして展望してみたいと思う。
歴史的にみると,児童虐待を明確に定義づけるのは難かしい。何故なら,ある時代,ある制度のもとでは,現在われわれが児童虐待と判断するような行為が,まったく正当なものとして受け入れられていたからである。
子殺し,子捨ての社会病理として,親子心中,嬰児殺,児童虐待,遺棄などが,近年にわかに世人の関心を集めるようになった。このうち,親子心中はわが国に特徴的なものと考えられよう。これらの諸現象を一括して論ずるのは,社会評論としてはともかく,精神衛生の立場からは無理だと思われるので,ここでは,いかなる文化,社会にも,また,いかなる時代にも存在した児童虐待について,現在までの医学的研究の結果を基礎にして展望してみたいと思う。
歴史的にみると,児童虐待を明確に定義づけるのは難かしい。何故なら,ある時代,ある制度のもとでは,現在われわれが児童虐待と判断するような行為が,まったく正当なものとして受け入れられていたからである。
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