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戦後10年間における神経症的葛藤の推移について
著者: 中川四郎1 江熊要一1 沼部敏夫1 桂あぐり1 神岡芳雄1
所属機関: 1群馬大学精神神経科
ページ範囲:P.17 - P.21
文献購入ページに移動(1)家族葛藤はⅠ期からⅡ期およびⅢ期において著明な増加がみられ,とくに第Ⅲ期の増加は中年の家婦において顕著であり,その内訳をみると嫁姑間の葛藤が増加していた。
(2)愛情(性的)葛藤はⅠ期よりⅢ期において増加し,中年の男性にその傾向がみられた。
(3)経済葛藤はⅠ期に多く,これは41才以上の男子において著明であつた。その内容も戦後の社会的経済的変動に密接に関係する右のであつた。
(4)職業葛藤はⅠ期に多いが,これは25才以下の青年男子に多くみられた現象である。
(5)身体葛藤はⅠ期に比べⅡ期,Ⅲ期は激減しているが,Ⅱ期の減少はとくに女子において著明であつた。
(6)道徳葛藤は各期の間に有意の差が認められなかつた。
以上の成績は心因性の精神神経障害発現の契機となる心的葛藤の内容が,顕著に社会的文化的環境を反映していることを示すとともに,その統計的処理のうえからみた変動に対応してかりに区分した3つの時期が,戦後の混乱期,不況期,回復期とほぼ一致していることは,社会精神医学上興味あるところである。
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