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展望
フランスの妄想研究(3)—第1部 症候論(つづき) 空想妄想病と熱情妄想病(A.恋愛妄想病・B.復権妄想病)
著者: 小木貞孝1
所属機関: 1東京大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.657 - P.665
文献概要
すでに1860年に,Morel(1)は,ある種の誇大妄想者の中に空想***(imaginaion)が精神活動の中核となつている患者を見出していた。同じころJ. P. Falret(2)も空想という精神活動についての透徹した考察を残している。ドイツでも,これと相前後してSander(3)がoriginäre Paranoiaの一型として家族性誇大妄想を記載している。その後,ドイツではこの病型について,多数の研究がなされことにDelbruck(4)の空想虚言はわが国でもよく知られているが,フランスでは,20世紀初頭のForel(5)の研究までみるべきものが少なかつた。
これから紹介しようとする空想妄想病はそれまでの研究を土台にして,1910年とその翌年Dupreとその協力者Logre(6)(7)によつて呈出された。以後フランスではこの名が一般化し,例の空想虚言の名はごく一部の人をのぞいてはあまり知られないこととなつた。
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