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研究と報告
分裂病様症状を呈したKlinefelter症候群の1症例
著者: 周維新1 山藤政夫2
所属機関: 1慶応義塾大学医学部神経科 2慶応義塾大学医学部皮膚泌尿器科
ページ範囲:P.741 - P.747
文献購入ページに移動Klinefelter症候群は,1942年,Klinefelter1),Reifenstein,およびAlbrightらにより初めて記載せられたHypogonadismの1特異型で,原著者らは17才より38才までの男子9例を示説し,おそらく原発性と考えられる高度の精細管変性(線維化),したがつて無精子症と睾丸発育不全(Leydig細胞はしばしば増生を示している),乳房女性化,尿中ゴナドトロビン増量を主徴候とする特異的症候群として指摘したものである。以来欧米においては,本症候群に一致すると思われる症例の報告数は逐次増加し,また本症候群の本態に関する検索が,多くの研究者によつてきわめて活発になされてきた。しかるに本邦においては,その知見の普及がはなはだしく遅れているためか,わずかに最近西村氏2)のインポテンツをともなう本症候群を思わしめる1例,松浦氏ら3)のGynecomastiaを有する定型的な本症候群の1例,江川・児玉4),高木・森5),小林・玉田6)らの計5例,および西7)氏らの脾腫とGynecsmastiaを主訴とする本症候群の1例,計数例がみられるのみである。
しかるに,Klinefelter症侯群の精神病理学的考察に関する報告は,本邦には1例もなく,外国においても少ない。わずかにKlinefelter,Heller & Nelson8),Rosenblit9),Ernould10),Züblin11),Bleuler12),Pasqualini13),およびHermann14)らの記載をみるのみである。
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